意識のちから

「フィルター」が創る世界 (1-1)

脳に操られているのか、脳を操っているのか?― その1

 私たちが見て、聞いて、触って、味わって、嗅いだものは、すべて脳がなければ象、音、感触、味、臭として感じられないばかりか、それらに快、不快の感覚を生み出す のも、脳によって成されています。

 例えばあなたが決まりきった日常を好み、変化を好まないという「フィルター」を持った場合、好奇心の誘惑を危険視するでしょう。そして、可も不可もない日常を送り、それに優るものはないと信じることでしょう。退屈を感じても、安全が第一の主義こそ平和で幸福なのだ、と。逆に同じことの繰り返しを好まず、常に新しいものに挑戦したり、新しい情報を取り込んだりと、日々刻々と脳内を構築し直している好奇心満々の「フィルター」を持った人と対比して見てください。

「脳は一生進化し続ける」とは言え、どちらの脳が進化しやすいでしょうか? 

 先回までの脳の具体的な働き及び領域を観て、その部分を刺激することで、無限の可能性が生まれる。ということを学びました。ただ、これらの実験は、まったく好奇心のない、ルーティン生活者の場合では効果は激減する気がしてなりません。なぜか?
 脳の進化とは神経細胞のネットワークの構造が構築し直されることで、「フィルター」は潜在意識に蓄えられた私やあなたのあらゆる体験・価値観、倫理観、信念、快、不快の好みからなる固定観念が自動的に働く癖の元となっているものです。私やあなたの日々はこの癖の支配下で物事を判断したり、決断したり、無意識に行動したりしていることが判明したからなのです。

ティーパック・チョプラ
「知識(新たなネットワーク)は事実に根差すものではなく、好奇心に根差すも」です。安全だけに捕らわれた固定化したネットワークからは、日々変化し、構造を変えるネットワークは創造できません。脳内ネットワークとは、神経細胞が新たな軸索や樹状突起を形成しながら糸状に伸びることです。一つの細胞(ニューロン)が他の細胞(シナプス)に繋がる活動の連続は現在では人生終盤まで続き、新たな軸索と樹状突起が形成されることが知られています。老化を予防し、あらゆる現実に適応できる可能性を与えてくれているのです。

 誕生直前の胎児は1分間に25万個の脳細胞を新たに生み、1分間に数百万個のシナプスを形成するという、新たな回路を創る脳の能力は驚異的なもので、誕生時にはほぼ90%完成された状態にあるそうです。その後数年間は使われていない不要なシナプスを焼失させ、新たな技能につながるシナプスが成長させることに費やされます。その数年間の間に好奇心を失くしたり、落胆してやる気を失くした子供は、脳の使われなくなった部分が衰え、その後の人生すべてにおける好機に悪影響を及ぼすことになります」とチョプラ博士は語っています。

 脳を上手く働かせるためには、刺激が必要です、しかし、刺激よりも感じ方の方が重要であることが明らかにされています。つまり、「フィルター」によって脳の活性度が変わるということなのです。

日野原重明Doctor
 今日7月18日、以前にもご紹介したことがある日野原重明さん、聖路加国際病院名誉院長が午前6時33分にお亡くなりになったというニュースが入ってきました。105歳でした。日野原さんも常々「新しいことに挑戦することが長生きの秘訣。私は好奇心が旺盛ですからね」と仰っていたことを思い出します。90歳に出版した『生き方上手』はベストセラーになりました。生と死、あるいは生きかたを思い考えることの重要性は、誰もが感じ、指摘しますが、この本にはそれがきわめて明快に具体的に示されています。「健康とは数値に安心することではなく、自分が『健康だ』と感じることです」や「人はいくつになっても生き方を変える事ができる」など、共感できることが多い人生の大先輩に力をいただきました。ありがとうございました。

ご冥福をお祈りします。

 

参考著書:ディーパック・チュプラ著「SUPER BRAIN」
                   「生き方上手」日野原重明著

 

 

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