人間関係クライシス「友情編」

 

目次

情とは

友情を育めない若者たち

自己開示力の低下

結論

 

友情について語る前に『情とは?』を紐解いてみたいと思います。

情とは

日本語において「情」は、単なる感情を表現する言葉ではなく、しばしば「愛」と近い意味を持つ言葉として用いられることがあります。

日本語における「情」という概念は独特で、他の言葉とは異なるニュアンスを持っています。

「情」は、愛情や感情、人間関係、思いやり、共感など、感情的な要素や人とのつながりに関する広い範囲の意味を含む言葉のように感じています。
この概念は、他者に対する深い思いやりや温かさを表すことがあります。また、忠誠心や信頼、共感をもって他者に接する姿勢も含まれます。

一方で、「愛」は、感情の中でも特に深く強い感情を指す言葉です。日本語の「情」には、「愛」の他にも友情や親子愛など、さまざまな感情的なニュアンスが含まれるため、「情」と「愛」は近い意味を持ちつつも、幅広い感情や人間関係の側面をカバーする点で異なります。

要するに、日本語の「情」は「他人と家族の中間」に発生する感情と言えるかもしれません。「愛」に近いが広い範囲の感情や人間関係を指す言葉であり、「愛」より少し軽い感情を指す言葉として使われることが多いように思います。

古来より日本人には特に「情」を大切にする文化があります。最近ではそのような特徴も少しづつ失われ気味で、ドライな関係へと変化しているようですね。

「情が湧く」「情にもろい」「情が厚い」「情が移る」という言葉がありますが、「情が湧く」とは、特定の状況や刺激によって、人間の内部から感情や情熱が自然に生じることを指します。この表現は、感情的な反応が自然に起こる状況を表す際に使われます。

例えば、健気な相手に感情を揺さぶられたり、個人的な悩みなどの相談に乗っているうちに「つい情が湧いた」とか、お互いの価値観に共感を重ねるうちに「情が湧いてきた」とかいう経験は多いと思います。

これは極めて「愛」に近い感情と言えないでしょうか。

「寄り添いたい」という想いと言い換えられるかもしれません。
無意識に発生する「強い思いやりの心」でしょうか、それはやっぱり「愛」に近いものですね。

このような「情」の持つ意味合いを強く表すのが「友情」と言えるでしょう。

「友情」で結ばれた友人間では、まごころ、誠意と言える信頼関係で結ばれ、その関係が長く続くと「親友」と言える関係に発展します。

 

友情を育めない若者たち

友情を育むことは、人間関係を構築し、豊かな人生を送るために重要なスキルですが、一部の若者たちにとっては難しい場合もあります。友情を育めない若者たちの状況には、さまざまな要因が影響している可能性があります。

ソーシャルスキルの不足:
友情を築くためには、コミュニケーションや共感などのソーシャルスキルが必要です。これらのスキルが不足していると、他人とのつながりを築くのが難しくなることがあります。

コミュニケーションの変化:
近年、テクノロジーの発展により、コミュニケーションがオンラインやSNSを通じて行われることが増えています。これにより、対面でのコミュニケーションスキルが不足する場合があり、友情を育むのが難しくなるかもしれません。

社会的な圧力や不安:
若者たちは社会的な圧力や不安にさらされることがあります。友情を築く際には、自己評価や他人との比較による不安が影響することがあり、これが友情の育成を妨げることがあります。

興味や趣味の不一致:
友情は共通の興味や趣味に基づいて築かれることが多いです。趣味や興味が合わない場合、友人関係を深めるのが難しいことがあります。

人間関係の過度なデジタル化:
オンラインコミュニケーションが増えたことにより、対面でのコミュニケーションや非言語コミュニケーションが減少することがあります。これによって、友情の発展が制約されることがあります。

これらの問題を解決するためには、以下のアプローチが考えられます:

ソーシャルスキルの向上:
ソーシャルスキルを向上させるために、コミュニケーションワークショップやトレーニングに参加することが役立つかもしれません。

対面コミュニケーションの重視:
オフラインでの対面コミュニケーションを大切にし、友人との直接的な交流を増やすことで、友情を育むチャンスを広げることができます。

共通の趣味や関心の探求:
自分と共通する趣味や関心を持つグループや活動に参加することで、共通の話題を見つけやすくなり、友情が深まるかもしれません。

自己肯定感の強化:
自己評価を適切に行い、他人との比較に囚われないようにすることで、友情を築く際の不安を軽減できるかもしれません。

バランスの取れたデジタル活用:
オンラインコミュニケーションを活用しつつも、対面での交流も大切にすることで、友人関係を健全に育てることができます。

友情を育む能力は、練習と努力を通じて向上させることができます。若者たちは自分自身と向き合いつつ、他人とのつながりを大切にすることで、豊かな人間関係を築いていくことができるでしょう。

現在ではSNSでつながった者同士が「友達」として登録され、時には100人以上もの「友達」を持つ若者たちも多いようですが、その「友達」関係は「友情」を育むまでには至らず、常に消滅・出現を繰り返す存在で、自己肯定感の拠り所としての保険的役割を担わせているにすぎないようです。

このような数字合わせの友達関係で終わっている彼らは「友情」の体験がないため、悩みを相談する対象は長年信頼関係で結ばれた「親」に向けられます。

こうして家族間のつながりは強められるとともに、他人と家族の中間関係を担っていた「友情関係」はますます遠ざかるばかりです。

このような状況が続けば恋愛や結婚、適切なパートナー選びへの不安や警戒心が強まり、自力での恋愛・結婚が困難になるのではないかと危惧します。

自分自身を他人に開示することや、パートナーシップを築くことに対しての不慣れさが影響することがあるでしょう。

少子化の波は大きくなるばかりという未来を予想できます。

自己開示力の低下

自己開示力は、能力と意欲の両方に影響を受ける要素です。

能力:
自己開示力は、自分自身の感情、思考、経験を他人と共有する能力です。この能力は、コミュニケーションスキルや社交的な能力と関連しています。

コミュニケーションスキル:
自己開示をする際には、適切な言葉を選び、感情や考えを的確に伝えるスキルが必要です。これには聴く力や表現力などが含まれます。

非言語コミュニケーション:
自己開示には言葉だけでなく、非言語的なコミュニケーションも含まれます。表情や身振りなどを通じて感情や意図を伝えることも重要です。

自己認識:
自己開示をするためには、自分自身を理解し、自分の感情や価値観に気付いている必要があります。自己認識が不足すると、他人とのコミュニケーションが難しくなることがあります。

意欲:
自己開示力は、自らの意志や意欲にも影響されます。

信頼と安全感:
自己開示は相手に自分の脆弱な側面を見せることでもあります。信頼関係や安全感があると、自己開示を行う意欲が高まります。

成長への意欲:
自己開示を通じて、他人からのフィードバックやアドバイスを受けることで成長できる可能性があります。成長への意欲が高い人ほど、自己開示を行いやすい傾向があります。

共感とつながりの欲求:
他人との共感やつながりを求める意欲が高い人は、自分の感情や経験を開示しやすい傾向があります。他人との深いつながりを築くことを重要視する人ほど、自己開示に積極的です。

総じて、自己開示力は能力と意欲の相互作用によって形成されると言えます。コミュニケーションスキルや自己認識を向上させることで能力を高める一方で、信頼関係や成長への意欲が自己開示の意欲を増強させることがあります。自己開示力を向上させるためには、能力の向上と意欲の向上の両面をバランスよく育てることが重要です。

このような観点からみると、家族間だけの閉鎖的人間関係にとどまることで起きる自己開示力の低下は、さまざまな影響を引き起こす可能性があります。

  1. 対人関係の浅化:
    自己開示は人間関係を深めるための重要な要素です。自己開示力が低下すると、他人とのつながりが浅くなり、深い友情やパートナーシップの構築が難しくなる可能性があります。
  1. 孤立感の増加:
    自己開示力が低下すると、他人との共感や理解を受ける機会が減少します。これが孤立感や孤独感の増加を招く可能性があります。
  1. コミュニケーションの困難:
    自己開示はコミュニケーションの基本です。自己開示力が低下すると、自分の気持ちや考えを適切に伝えることが難しくなり、相手とのコミュニケーションがスムーズに行えなくなるかもしれません。
  1. 信頼関係の損失:
    自己開示は信頼関係の構築に欠かせない要素です。他人との信頼関係を築くためには、自分自身をオープンに示すことが重要です。自己開示力が低下すると、信頼関係が損なわれる可能性があります。
  1. 成長の制約:

自己開示を通じて他人からのフィードバックやアドバイスを受けることで成長が促進されます。自己開示力が低下すると、成長の機会が制限される可能性があります。

  1. 心理的ストレス:
    自己開示を抑えて感情や思考を内に溜め込むことは、心理的なストレスを引き起こす可能性があります。感情や考えをオープンに表現できない状況が続くと、ストレスが蓄積しやすくなるかもしれません。

このように、自己開示力の低下は対人関係や心理的な健康に悪影響を及ぼす可能性があります。適切な状況で自己開示を行い、他人とのつながりを育むことは、健全な人間関係や個人の成長に不可欠な要素です。

結論

デジタル社会の中心SNSによる広く浅い人間関係は若者たちへ多大な影響を及ぼしています。

他者との関係性を薄弱化し、家族間だけの閉鎖的人間関係に留まるという、安易に見逃せない状況にあるということが解りました。

この状況は若者たちに人間関係クライシスを増大し「負」のスパイラル化を招いている状況です。

「友情」は「愛」への入り口と言っていいほど重要な人間性の成長を促す要素と言えます。

このままでは、一人一人がバラバラで存在し、「愛」も「情」も持たない機械的人間が増え、若者たちが自分自身の家族さえ築けないような社会になりかねません。

人間らしい豊かさを知らないまま、高齢化する人を生成してしまいそうです。

彼らにまず「友情」の体験をしてもらいと切に願うばかりです。

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