共創空間

 優秀な人間が、銀行家ではなく研究者を選べば

『隷属なき道』(続)

第7章 優秀な人間が、銀行家ではなく研究者を選べば まとめ

 ・農業や工業の効率が上がるにつれて、経済に占める割合が縮小。サービス産業に多くの仕事を生み出した。ますます多くの人が有形の価値を生み出さないまま金を儲けるシステムができ上がった。

・そこには「くだらない仕事」をする余地も生れた。そして管理職が多い国ほど、生産性と確信性が低いことが分かっている。ハーバード・ビジネス・レビューが1万2000人の専門職の人を対象に行った調査では半数が、自分の仕事は「意味も重要性も」ないと感じ、同じく半数が、自らの会社の氏名に共感していなかった。

・「空飛ぶ車が欲しかったのに、得たのは(ツイッターの)140文字だ」とシリコンバレーの住人ピーター・ティールは揶揄する。戦後の時代が、洗濯機や冷蔵庫やスペースシャトルやピルといった素晴らしい発明をもたらしたのに対して、ここ数十年間の確信は、数年前に買った電話にわずかな改良を加えることだけだった。

・優秀な人材が、富の創造ではなく、富の移動に投資されてきた。何かを生産しなくても富を得ることができ、稼ぎが良いのだから、価値あるものを生み出しているという虚偽意識を導いた。これは、あるべき状況ではない。

・1970年には、アメリカの株は平均で5年も保持されていた。しかし40年後、平均的な保持期間はわずか5日になった。株の売買のたびに支払いが生じる取引税を課したら、社会的価値をほとんど生み出さない高頻度トレーダーは、瞬瞬間的な株の売買によって設けることはできなくなる。

・ハーバード大学行われたある研究は、レーガン時代の減税が最も優秀な頭脳を、教師や技術者から銀行員や会計士へと変えた、と指摘する。70年には、ハーバードの男子学生で研究者の道へ進む人は、銀行業界へ進む人の2倍いた。20年後、そのバランンスは逆転し、金融業界に就職する人は研究職に進む人の1.5倍になった。

・結論を言えば、私たちはみな貧しくなった。銀行が1ドル儲けるごとに経済の連鎖のどこかで60セントが失われている計算になる。しかし、研究者が1ドル儲けると、5ドル以上の額が、経済に還元される。高額所得者に高い税金を課せば「才能のある個人を、負の外部性をもつ職業から、正の外部性を持つ職業に再配分」できる。税金を高くすれば、有益な仕事をする人が増える。

 ― アーサー・C・クラーク(1917~2008) ―

目指すべき未来は、全員の失業だ。そうなれば、誰もが遊んで暮らせる

 

 『隷属なき道』p178~180より引用

 

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