『凪のお暇』再放送、また見てしまいました。
このドラマを通して、日本人の典型的な暮らし方、生き方を真正面から突きつけられ観せられた感をぬぐい切れません。
見栄と虚構の砂のお城を一生懸命守ろうとする親たちの姿。そしてその虚構の上塗りを子供たちに強要し、実態をひた隠し見栄にまみれ続ける。それに抗おうとする子供には罪悪感を煽りたて言うことを聞かせようと・・・・
虚構という実態を少しでも本物に近づけるために、子供を利用し、他者を利用し、這い上がろうと躍起になる。
何らかの強権な傘下を求め、空気を読み倒し、相手の都合のよい酸素になりながら、配下をつくってコントロールし、それを力にしようと明け暮れる。
他者にはいつも嘘の顔しか見せないために、本当の気持ちをこぼせる相手は当然いない。独りぼっちの寂しさの補足は、自分を知らない商業的サービス人に依存するしかない。夜の街はそんな人たちで溢れかえる。
高橋一生演じる慎二のセリフに、「子供って嫌でも学んじゃうよな、親が笑ってくれるために何て言ったらいいか。で、空気読んで相手にとって都合のいい酸素になっていつのまにか自分が消える・・・・わかるから・・・」
これは凪がはじめて自ら選択した友人との共同経営計画のコインランドリーの契約を締結し、購入費用を振り込むその約束の日、急な母からの電話で帰省した際、母の要求に一度は抗うものの、例の如く罪悪感を煽る圧力に負けてしまい、その日に振り込むはずだった大切なお金を、母の講座に振り込んでしまって、計画が波のかなたへ泡となって消え去ってしまい、「慎二の言ったとおりだった、私は変われない」と言う凪への慎二の慰めの言葉です。
現代の日本の子供は親にこれほど従順だとは思いませんが、韓流ドラマの構図はまるでこのままのようです。
子供は空気が見えない。
格好いい父、優しい母、出来の良い兄弟姉妹。そんな家族の幸せに包まれながら、成長するに従いほころびが見え隠れする中も、決して全部が嘘ではなかったと思いたい気持ちを大切にし、嘘の上塗りをしてしまう社会新参者の若者たち。
見ていて胸が痛み、こちらの方が苦しくなってしまうのです。
そして、つい最近、再放送された木村拓哉主演の『CHENGE』も全く同じ構造ですね。正義感にあふれた若者が党の人気回復のために利用され、国民の人気に支えられ、あれよあれよという間に総理大臣になってしまったものの、正義とは真逆の政界ルールに従わず、権力と嘘を拒否し続けたことが仇となって、あの手この手で引きずり下され、傷つく総理やそのチームの仲間たち。嘘や隠蔽が当たり前の政界をモデルにした日本型社会の批判ドラマです。
若者は、そんな社会に『本音』で挑んでみるが、結局構造の罠にかけられ、勇気も正義も実も消えてしまう。嘘にまみれた社会こそ、【長い物】となって首を絞めてくるというわけなのです。
韓国では最近そんな社会構造からか、慰安婦問題の鍵を握る人が謎の死を遂げました。口封じだったのでしょうか。
誰もが、このような社会や慣習を好んでいるわけではなく、社会的構造によってそれを成さざるを得なくなっているのだと、一方では理解するのですが、どうしても、そんな文化を受け入れる気になれず、反発し、ドラマといえども胸を傷める私は、世間慣れした人たちからは「乳臭い」と言われそうです。
これらのドラマは、新型コロナ禍の現代にジャストフィットし、今後のパラダイム(構造)シフトの方向性を促すメッセージが込められているように感じています。
かくいう私も、この【長い物】にどれだけ翻弄されて来たかしれません。つい最近までその【長い物】(仏門)から完全脱却できず、自分に言い訳しながら縁を繋いでいた気がします。
但し、真っ向から勝負はしないものの、ぬっぺりと潜り抜け、今では思いのままの生活を満喫しています。
だからこそ、この構造的虚構には敏感に反応してしまうといえるのかもしれません。すべての若者たちが、虚構に巻き込まれ自分を失って、やりたい事もわからなくなってしまうような生き方ではなく、自由に胸を焦がすような恋愛や、離れ難い絆、愛で結ばれた結婚、そして自分のやりたいことを選択してそこへ突進していけるような社会構造へと転換できるよう祈るばかりです。そして「生まれてよかった」生まれ変わるならまたこの世に戻りたい、というような日本を築けたらと願うばかりです。
最後に:このドラマのお蔭で中村倫也さんのファンになりました。でも中村倫也さんと言うよりも「安良城ゴン」に憧れたのかもしれません。とても魅力的なキャラクターの持ち主でした。原作者の「コナリミサト」さんにもお会いしたい、そしてゴンさんのモデルとなった人が実在していたか聞きたいと思いました。
おまけ:こんな感想がありました。
・毒親みてるのつらいです
・慎二が不器用すぎてつらいよ~
・面白いんだけど自分にあてはまるのがつらい
・自分の人生みたいでツライ。でも面白いから見ちゃう
・最初からずっと胸が苦しくなるけど、ステキなドラマ・会社での息がつまる感じ、親との関係などがリアルに描かれてて、見てる人たちにもなにかしら覚えがあることがたくさん出てくるんですよね。それで、「わかる!」ってことも多いけど「わかりすぎてつらい」ことも多いのかな。
重くなりすぎないような演出、演技をされてるので面白いんだけど、ちょいちょいセリフが刺さったりするんですよね。高橋一生さんが演じる慎二がつらいっていう声も多いです。
凪に対してはモラハラ彼氏だったけど、じつは凪のことがちゃんと好きで、でもそれを伝えられない、不器用すぎる慎二。そんな慎二が見ていてつらい、どうしてそうなるんだよ、そう言っちゃうんだよって思ってつらくなっちゃうんですよね。
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