選択が未来を創る

 

先回に続き『選択』の問題をもう少し深堀してみようと思います。

私たちは日々刻々、選択の連続に明け暮れています。極端に言うなら「選択こそ人生」と言っても過言ではないでしょう。

先回の冒頭で「すべての行動は自らの選択⇒自己の未来を創造している」と記しました。
そう、「選択によって個々の未来は創造される」ということを再認識していただくことで、積極的に『選択』を意識し、より豊かな未来の創造へお役に立てればと思います。

さて、先回ご紹介した引用サイトでは「選択と決断」についての理論と根拠について詳しく見てきました。また、人は決断力よりも選択力を養うことの重要性について、そして、選択力を養うにはリサーチ力を鍛えるべきという見解を示されていました。

最後の「リサーチ力」については少々異論がありますが、それについてはおいおい触れてゆきたいと思います。

さて、最初にこの『選択』という行為についてですが、日本人(特に古い日本人)は、どうも不得意とする行為ではないかと思っています。

何らかの選択を迫られたとき、皆さんは一人で考え込みますか?それとも周囲の人たちの様子をまず伺いますか?

実は、多くの日本人は後者のように周りの選択を気のする人が多いのではないかと思うのです。

それは、日本文化の『一様性』という、みんな一緒、足並みをそろえる、もしくは「普通は?」とか「一般的には?」などの思考形態によるものと思われます。

つまり、自分で考える前に周囲の人々の選択を見ながら、同調することで、マジョリティーの仲間を維持し、決してマイノリティには属さないという姿勢です。

選択の中身よりも同調のほうが重要な文化。
『同調圧力文化』ともいうべき社会の中で長く生きて学習した結果です。

そのおかげで、私たち日本人は自分の考えを持たないほうが同調しやすいことを学習し、自由意思を持たない選択をしてきたといえます。

自己を主張したり、自ら自由に選択する行為という習慣は身についていないため、どうしても自分だけでは選択も決断も困難というのは当然の結果と言えますね。

NHK大河ドラマ『どうする家康』が始まり、家康の優柔不断さが描かれていますが、大変興味深く見てしまっています。

先回の紹介記事の「リサーチ能力」という解決法は、こういった習慣の延長として挙げられるべくして挙げられたと感じています。

これは、対症療法にはなっても原因療法にはならないのではないかと、私自身は感じています。
このようなやり方自体が日本人的と言えるのかもしれません。なぜなら、「自分の考え」を持たないままでは、いつも他者の意見をリサーチする必要があり、その他者の意見が多様である場合、余計に混乱を引き起こしてしまいます。

グローバル社会の影響によって「ダイバーシティー(多様性)」という概念が浸透してきた現代社会において、自己の確立ができないままでは、ダイバーシティー&インクルージョン(多様性を包括する)渦からはじき出されてしまうのではないでしょうか。

「ダイバーシティー(多様性)」も本来の意味は、単に性差別や人種差別をしないだけではなく、個々の思考、観念の違いを認め合い尊重しあうことなのです。

そもそも個々の思考,観念が確立していない者にとって、ダイバーシティー(多様性)を深く理解し、インクルージョン(包括)できるはずがありません。

そして「選択」はそのようなダイバーシティーインクルージョン下での行為としては必要不可欠なものになってきているといえるのではないでしょうか。

多様な人材に活躍してもらうダイバーシティ&インクルージョンの考え方が注目されている背景には、外部環境の急激な変化があります。

具体的には、少子高齢化に伴う働き手の減少、顧客ニーズやリスクの多様化などが挙げられます。

また、ダイバーシティ&インクルージョンに取り組む中小企業は、そうでない企業と比較して、主たる経営成果のすべての項目において、効果的な結果を上げていることが示されており、競争優位性を築いていくために必要不可欠な考え方であるといえます。

ダイバーシティ&インクルージョンとは?意味や導入方法、事例を紹介 | ツギノジダイ (asahi.com)

インクルージョンのメリット

・個々人が尊重されて、メンタルヘルスが良い状態を保ちやすい
・心理的安全性が担保され、働きやすさが向上する
・メンタルヘルスや働きやすさを阻害する問題が少なくなる離職率が下がる
・活発な意見交換が行われるようになり、画期的な企画や意外な提案が生まれやすくなる
・仕事における満足感が得られるため、作業効率が上がる

インクルージョンの意味や目的とは?ダイバーシティーとの違いを紹介 | THANKS GIFT エンゲージメントクラウド (thanks-gift.net)

こういった意味から、私たち日本人は「同調圧力」の矛先をマイノリティーに向けるのではなく、あらゆる価値観、あらゆる思考形態、観念に耳を傾け(傾けられなくても)、尊重する姿勢に変化せざるを得ません。

その上で、自己の思考のゆるぎない体幹となる理念を育て、確立してゆく必要性を迫られます。
そしてそこにこそ『選択』の重要性を感じないではいられません。
なぜなら、ダイバーシティーの中から自己の理念に有効に働きかけ、自己の不足を補う可能性を見つけ出さなければならないからです。

そうしてこそダイバーシティーがメリットとなって、自己の未来の創造をアシストする役割を担っていけるのです。

何を取り込み、何を切るかの選択は、周囲の顔色など窺っている場合ではないということです。常に自己の進む道は自己の選択しかなく、自己の人生の責任は自分にしかありません。他者に責任転嫁しても生きてこられた時代はもう終焉を迎えているのだということを私も含めて肝に銘じるべき時です。

今後は周囲に向けていた目線を、自己の得意、不得意の認識強化に向け、不足を補う多様な人材との交流が必要となります。その選択視座を磨くことこそ、未来への希望となるでしょう。

これまでのような指示待ち人間、忖度人間が重宝がられる、対人コミュにケーション能力さえあれば、という思い込みを払拭し、「自己」を知り、「自己」を磨く、そして他者を観察し、判断し、選択する道へと方向転換することこそ、自己の未来を明るいものにするということをお忘れなきよう。

最近話題になっている本にオルナ・ドーナト著『母親になって後悔している』があります。

オルナ・ドーナト(Donath,Orna)
イスラエルの社会学者・社会活動家。テルアビブ大学で人類学と社会学の修士号、社会学の博士号を取得。2011年、親になる願望を持たないユダヤ系イスラエル人の男女を研究した初の著書『選択をする:イスラエルで子どもがいないこと(Making a Choice:Being Childfree in Israel)』を発表。2冊目となる『母親になって後悔してる』は、2016年に刊行されるとヨーロッパを中心に大きな反響を巻き起こし、世界各国で翻訳された。
オルナ・ドーナト | 著者プロフィール | 新潮社 (shinchosha.co.jp)

NHKでも取り上げ以下のサイトで、日本においてもアンケート調査されました。詳細↓

【調査結果】“母親になって後悔してる。でも子どもは愛してる” WEBアンケートで見えた女性の葛藤 (nhk.or.jp)

オルナ・ドーナト
 鹿田昌美

もし時間を巻き戻せたら、あなたは再び母になることを選びますか? この質問に「ノー」と答えた23人の女性にインタビューし、女性が母親になることで経験する多様な感情を明らかにする。女性は母親になるべきであり、母親は幸せなものであるという社会常識の中で見過ごされてきた切実な想いに丁寧に寄り添った画期的な書。

 

いみじくも、岸田首相が「異次元の少子化対策」を声高々にアピールしている今、世界でも日本でも実は女性たちの多くが母親になったことを後悔しているという事実。

そして彼女たちは母性の幻影で創り上げられた社会通念という圧力から子供を設け育てた。本心は子供を切望し、母親にあこがれていたわけではないという隠された事実が明らかにされたのです。。彼女たちはその事実を決して言葉しませんでした。女性失格の烙印を恐れたからです。

このように私たちは自己の希望とは離れた社会の圧力(通念など)によって多くの選択をしてきたことに改めて気づかされました。

まるでこの本によって「パンドラの箱」が開けられたように、触れてはならなかった事実が明かされ始めたという気がしています。

こうした事実を踏まえても、私たちは如何にいい加減な選択をしてきたかがわかります。

こんな事実がわかった以上、並大抵の方法では少子化解決はできないのではないでしょうか?子供手当や保育施設、父親のわずかな育休の問題だけでは解決しないことが判明したのです。

もっと早く世の女性たちが本音をぶちまけ声を上げらていれば、方策を考える時間がありました。その声を上げられない社会圧力にもっと早く目を向けられてさえいれば、と後悔しても、もう手遅れになりそうな気がしています。

子供を産んでくれる女性への感謝が、もっと世の中に当たり前のように浸透していたら、女性の扱いも、地位も現在のように粗雑かつ低くなってはいなかったでしょう。

子育てしやすい国ランキングのトップはアイスランド。安全性、幸福度、コスト、教育の指数が高く、総合1位。

1アイスランド
2.  ノルウェー
3.  スウェーデン
4.  フィンランド
5.  ルクセンブルク
6.  デンマーク
7.  ドイツ
8.  オーストリア
9.  ベルギー
10.  チェコ
11.  オランダ
12.  ポルトガル
13.  フランス
14.  オーストラリア
15.  スロベニア
16.  アイルランド
17.  スペイン
18.  ニュージーランド
19.  カナダ
20.  ポーランド
21.  ハンガリー
22.  スイス
23.  イギリス
24.  イタリア
25.  日本
26.  イスラエル
27.  スロバキア共和国
28.  韓国
29.  ギリシャ
30.  ルーマニア
31.  ブルガリア
32.  トルコ
33.  チリ
34.  アメリカ
35.  メキシコ

「世界のリーダー」アメリカの順位の低さ。特に発信元のAsher&Lyrics社においてライターを務めるLyric Fergusson氏は、アメリカで生まれ育ち、現在もLAで子育て中の自身の感覚から、「最初にランキングを見た時は信じられず、各データをもう一度洗い直した」という。

その後データが全て疑いようのないものであることを確認した同氏は、改めて自らの体験を深く省み、子ども時代に目撃した殺人事件のトラウマや最近身近に起きた事件の数々、現在も公立校の95%の子どもが日常的に校内乱射事件が起きた場合の避難訓練を受けなければならない事実、母親の出産時死亡率や子育てコストの高さ、有給取得の困難による子どもと過ごす時間の少なさなどを振り返っている。

そして結果として、母親から「世界で最も優れた国」であると言い聞かされて育った自らの母国が「チャンスはお金持ちにしか与えられないという事実に子育て中の親は日々直面し、大きな問題に苦しんでいる国である」という痛々しい結論に至ったと告白し、「私たちの子どもが生きているうちに大きな変化が起きることを望みます」と考察を結んでいる。先進国であることや国として有する富の大きさと、子育てのしやすさは必ずしも比例しないという分かりやすい例だろう。

近年オランダの「世界で子どもが最も幸福な国」「英語が母国語でない国における大人の英語力世界一」「多様性に寛容なリベラルな風土」といった評判が定着しつつあることがある。

中略

筆者は現在教育移住先として人気のオランダ(今回のランキングでは総合11位)に住んでいる。私が移住した動機もやはり「教育移住」が大きかった。常々、私と違って英語力や国際感覚、合理的な問題解決といった「使えるスキル」があり、なにより楽観的で幸せになることに何の葛藤もないオランダ人の夫を見て、自分の子どもには彼と同じお気楽な人間になってほしい、そのために同じ教育を受けさせたいと思っていたというのがおおまかなところだ。

現在移住して7年が経過しようとしているが、「この国は子育てがしやすい」ということは明確に言える。「子どもに配慮した社会システムやおおらかな文化が子育てに向いている」と言ってしまうとありていな言い方になるが、無理やり包括するとそんな感じだ。

多様性やミスに寛容で、人権意識が高く、大人も子どもものびのびとしている個人主義なこの国での子育ては、もちろんままならぬシステムにイライラさせられることも多い。しかしその一方で、つい子どもの発育を四角四面に考えすぎ、些細なことで不安になり、子連れで街に出れば他人に迷惑をかけることを恐れて息をするようにスミマセンスミマセンと人に謝ってばかりいた典型的ジャパニーズマザーの私をずいぶんとリラックスさせてくれた。

教育に関しても政府からの補助が大きい(通常18歳までの義務教育は無料、『大学』の学費は平均的に年間20万円程度)のと、学校現場での学習評価は徹底した個人内評価なので、「子どもが大学に行く年齢になるまでに〇百万くらいは貯金しないと」「小学校に上がる前に基礎的な読み書きと英会話とダンスくらいは習わせておかないと恥をかくのでは?」といった私の焦りは全て一蹴された。

移住して間もないころに日本に一時帰国したのだが、1カ月の東京滞在を終えて、故郷を去ることへの悲しさでいっぱいになりながら子どもと一緒にオランダに戻る飛行機に搭乗したときに、周りからざわざわと耳に流れ込んできた分かりもしないオランダ語に思いがけず大きな安心感に襲われた。この時のとんでもなく矛盾した、複雑な感情は、今でも忘れることができない。

中略

子育てがしやすい国は概して大人も暮らしやすい場合が多い。裏を返せば、子育てをやりやすくするにはまず親となる大人が幸福でなければならないという話でもある。

先述のアメリカ人ライターのLyrics氏は、「今回のランキングを見て私は目から鱗が落ちる思いでした。(中略)私は母国の欠点に麻痺してしまって、この国は素晴らしいと思い込みたいがために嫌な体験をしても見てみぬふりをしてきたのです」と語っている。子育てのしやすさを可視化しようと試みた今回のランキングから、大人である私たち自身が日々知らずに受けている幸福や改善点も透けて見えているかもしれない。

最新「子育てしやすい国ランキング」日本は何位? 格付理由と人気の教育移住先オランダのケース | AMP[アンプ] – ビジネスインスピレーションメディア (ampmedia.jp)

すでにお気づきのように、子育てのしやすさには国民性も大きくかかわっていることがわかります。

ただ、少子化は子育てのしやすさだけでは解決できないことが、以下のヨーロッパ各国出生率に示されています。

世界の出生率の現状を抜粋しました。

  1. 133位フランス              1.9
    142位アイスランド       1.8
    146位ニュージーランド              1.7
    149位チェコ共和国       1.7
    150位アメリカ              1.7
    151位アイルランド       1.7
    152位デンマーク           1.7
    153位スウェーデン       1.7
    156位オーストラリア    1.7
    以上 OECD9か国

169位    オランダ              1.6
170位    ベルギー              1.6
173位    ノルウェー           1.5
180位    スイス        1.5
191位    日本                1.4
192位    フィンランド       1.4
208位    韓国           0.9

【2021年】世界の出生率の現状 国別ランキングと今後の予測 | ELEMINIST(エレミニスト)

このような状況下で、「異次元の少子化対策」がどれほど期待できるかを考えると、焼け石に水で終わるような気がします。

少子化だけにとどまらず、もっと深くて根深いミスがあるように思われてなりません。
今日の結果は過去の何らかの選択間違いが原因なのです。少子化を見るだけでも危機的状況に陥っているのですが、その原因は見えているものだけではないようです。
早急にこれまでの「当たり前「普通」を解体す必要があるのでは?

これは一つの例にすぎません。私たちは、ありとあらゆる選択に際し、こういった間違いだらけの思考・認知バイアスに侵されていることを、この機会に真剣に意識するとともに、素早い対処を迫られていることを痛感しました。

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