世界観のスペクトル

包括的視点の重要性

 歴史とは、ただ、起きた物事の記録だけではなく、人類の成長の記録とも言えます。その意味においては「世界観のスペクトル」という観方もできるのではないでしょうか。

『インテグラル理論』をバックボーンとする『ティール組織』(フレデリック・ラルー 英知出版 初版2018年)が、世界でベストセラーになり、日本でも、その提唱者ケン・ウィルバーの思想が注目されるようになっています。

ケン・ウィルバー(Ken Wilberは、トランスパーソナル心理学者であり文明思想家である。広範な知を統合してきた業績から「意識研究のアインシュタイン」と呼ばれています。

日本で出版された『インテグラル理論』の原題はA THEORY OF EVERYTHIGです。日本語で「万物の理論」。この世界に生じる全ての現象を包みこんで説明できるように「統合」するのが「万物の理論」です。

『インテグラル理論』については、別の機会にふれることにして、今回はケン・ウィルバーの意識研究の枢軸となっている意識をスペクトルとみなすという論理から、世界観の移り変わりの歴史を一つのスペクトルとみなす考察を試みました。日本において、こういった考え方の代表は『密教』、特に空海の思想に近いものがあります。

 スペクトルとは

スペクトル(英語: spectrum)とは、複雑な情報や信号をその成分に分解し、成分ごとの大小に従って配列したもののことである。2次元以上で図示されることが多く、その図自体のことをスペクトルと呼ぶこともある。様々な領域で用いられる用語で、様々な意味を持つ。現代的な意味のスペクトルは、分光スペクトルか、それから派生した意味のものが多い。

参照: ja.wikipedia.org/wiki/スペクトル

「東洋的」、「西洋的」と呼ばれる人たちは、互いに異なった言語、方法論、論理を用いているため、自分たちが全員、まったく同一のスペクトルの異なった帯域、あるいはレベルにのめりこんでいることに気づいていない。互いに互いが誤っているとする論争は、各人が別々のレベルから一つのスペクトルについて語っていることを認識することによって、はじめて解決される。
(ケンウイルバー著「意識のスペクトル」より)

プーチンによるウクライナ侵攻、精神異常者ではないかというほどの徹底的蛮行は、戦争犯罪と世界中から非難を浴びながら、益々エスカレートしています。

欧米諸国(NATO)の自由と民主主義はプーチンによる専制支配の枠組みを根底から崩される脅威から、ミスディレクション(注意をそらして真実を見えないようにする)とミスリード(判断を誤らせる)によってロシア国民を誘導し、ナチス並みの独裁政治を堂々と行っています。

「自分たちは間違っていない」というこじつけ正当化メッセージを国内外に発信していますが、この時代には戦争好きの一部の国を除いては、到底受け入れられないようなプーチン常識を、嘘と脅しのスパイラルでねじ伏せ、信じ込ませようとしているのです。

私たちは過去においてこのようなプーチン常識と同じスペクトル帯域の中に生き、騙されたり、「おかしい」と思いながらも、脅しに屈して本意に蓋をして共犯者になり下がってしまうという時代を経験してきました。

いじめのメカニズムと同じように「自分がいじめられないために、他者のいじめに加担する」というプロセスです。

ロシアの国民も、戦争反対論者は次々に抹殺の対象にされているようです。
「勝か負けるか」「どっちが覇権者か」という価値観は、すべてヒエラルキー構造から生まれます。

極端にいうと、「生きること」=「勝つこと」(隷属させる)という常識が脳に深く刻まれ、それに従って行動するという、正にヒエラルキー型世界観という自己洗脳です。あまりにも極端に信じすぎてしまった信念、価値観が及ぼす病的な行動と言えます。

プーチンはそのような一つの価値観にのめり込んでしまった自己洗脳による人間の危うさを示しています。

このようなプーチン型病的権威主義は、過去のヒットラーにはじまり、北朝鮮、中国など、まだまだ力と暴力(抹殺)こそが国益と考える国も少なくありません。

現在、欧米諸国ではその学習を生かし、自由や民主主義、そして多様性といった新たなパラダイム実践に向けて成長し、一部の特権階級の幸せに留まらず、国民総「平和」と「幸せ」の道という進化を続ける道を選択しています。

ロシアのような大国の大統領が、歴史を逆行するような、情報統制やプロパガンダによる国民操作という一時代前の専制政権を強化することしか知らない人間性で世界を荒らす、反社会的勢力(暴力団・ヤクザ)としての正当性に成功した場合、それに続く同様の国に大きな力を与えてしまうでしょう。

1980年前後生まれの日本の新しい世代の若者たちは、「怒り」「戦い」という概念を持たない人たちが多くなっています。虐めを受けても、落ち込まない、怒ることを知らない、他者と敵対しないなど平和主義の子供たちが増えてます。

「あなたの正しさは、あなただけものです。同様にわたしの正しさは私だけのものです。だから敵対する必要はありません。あなたの思う正しい道をどうぞ堂々と歩んでいってください。私も私の正しいと思う道を堂々と歩んで行きます。いつかどこかでまた出会えたら、いいですね」といったHappy思想ともいうべきものでしょうか。

私たちは過去の過ちを学習し、少しずつ人間として知的に進化を遂げているのです。個人的には、世界的にもそういった若者たちが増える傾向にあるのではないかと思っています。

旧い老とるたちの頭の中は、そういった新しい価値観を受け入れて理解する仕組みになっていません。ただただ自分が信じている正しい道をまっしぐらに突き進むことしかできないために、若者たちが見えているものが彼らには見えないのです。見えないものをいくら説明しても、彼には存在しないこと、絵空事でしかないのです。

今、私たちがすべきことは、ウクライナへの支援も重要ですが、プーチンを穴の開くほど観察し、彼の頭の中の固定化され固まってしまったほんの狭いネットワークに目を向け、「決めつけ」という狭小思考の危険性を知るべきと思うのです。

脳内ニューロネットワーク(神経回路)が狭小なほど、「恐れ」や「怒り」「不安」に支配され、敵対、暴力、殺戮に走る危険が大きくなるような気がします。それは、人間進化が遅れたまま止まってしまっているということなのではないのでしょうか。

知性と脳内ネットワーク
しかし最近、特定領域のみが知性に関与するのではなく、知性は脳全体の協調した脳内ネッットワーク作業であることがわかってきた。脳内ネットワークのひとつの頭頭頂ネットワーク(frontoparietal network)は外的対象への注意喚起で活性化されるのに対して、関連事象に注意が向けられると腹側注意ネットワーク(salience network)が働く(下図)。このほかに脳がアイドリング状態の場合に動作する脳内ネットワークも存在する。

Credit: biologicalpsychiatrycnni

 

人間にあるふたつの知性

人間の知性には知識と経験が符号化して記憶されている結晶的知性(crystallized intelligence)の他に、極めて柔軟な適応推論や問題解決型の流動的知性(fluid intelligence)がある。結晶的知性は何度も繰り返し起動されるためネットワーク結合が強いが、流動性知性は脳が新規な事象に出くわすと起動する動的でネットワーク結合は弱い。人間は常に新しい知識や経験を書き込んで新しいネットワーク結合がつくられるため、柔軟であることが知性を高めるには重要となる。結晶的知性に比べて流動性知性は年齢とともに能力が低下する。

 

柔軟な動的ネットワーク結合と知性

この柔軟性が人間の脳機能に重要であることが認識されても、それが知性発現に根幹的な役割を果たすことがわかってきたのは最近のことである。結晶的知性には(ネットワーク上の)アクセスしやすい状態に柔軟に到達する能力が必要である一方、流動性知性にはアクセスしにくい状態に適応して到達する能力が必要となる。言い換えれば知性には脳の単独領域や単独ネットワークの活動ではなく、脳全体のネットワーク間の動的切り替えが重要であることになる。

 

人間の知性の根幹に脳内ネットワーク結合の柔軟性 – trendswatcher.net 引用

プーチンという怪物は、ピラミッド型社会構造というエネルギーが創り出した、人間を根絶やしにする癌細胞なのかもしれません。たとえプーチンという一個人が万が一消えたとしても、癌細胞は世界のあちこちに散らばって転移することは間違いありません。

既に腫瘍マーカーの数値が高い、北朝鮮、中国といった危険を発する国が存在しています。
そんな国を手術によって切り取るしか方法がない、というのは少々時代遅れということかもしれません。

進化した人類のそれなりのやり方を見つけるべき時なのかもしれません。

この記事をシェア:

コメントはこちらから

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です