脱・ヒエラルキー思考 1

 先日『徹子の部屋』に上沼恵美子さんが出演していました。

いつも自身の番組では、ゲストの方々にマウントやお世辞、忖度を駆使し、優位性を測る行動を基本にしている方だという認識はありましたが、今回の『徹子の部屋』での徹子さんへの対応は、まるで神様扱いでした。

ご自身の仕事について、そろそろ辞めようかと「どうしたらいいでしょうか?徹子さんのおっしゃる通りにします」と。

いつもの態度とは大違いに、大きな身体を小さく畳んだ姿勢。
「まだ、お若いんですから、お続けになれますよ。そうなさったらいいんじゃないですか」と丁寧な徹子流の対応に、拝むように「ありがとうございます」を返す彼女の言葉には、賛美の嵐が加わり、あまりにも強烈なヒエラルキー主義・思考を感じて違和感さえ覚えました。

でも、このような場面は古い日本風土では当たり前のように見られる状況です。

このように私たちの脳には強い「ヒエラルキー思考」という羅針盤(心のコンパス)が自動的に働いていつもピラミッドのどの位置に居るか?相手は自分よりも上に居るか下に居るか?という想いが無意識に働いてしまうのです。

時には、自分が認識しているそれぞれの位置と、相手が認識している位置とが微妙に異なる場合もあります。概ね相手は自分のことを、自分より低く認識していることが多く、そんな時に自分の優位性を示す行為「マウント」を取って、威圧的に振舞います。

私がTV上で、上沼恵美子さんからよく見せられる振舞いです。

陰口大好きという彼女ですが、それも優位性を誇示する習性なのでしょうか。でも、殆どの日本人は日常的にこんな振舞いをしてきたし、見せられてきました。

ピラミッドの階段を他者よりも少しでも高い位置に陣取ることが、まるで生きる目的のように羅針盤はセットされていたからです。そうそれが「世界観」そのものです。

その世界観を基礎に自己は構築されていたわけです。

「へつらい、隷属」か「いびり、不遜」かの社会構造の中で育った若者たちは、そんな大人社会には入りたくないと、「自分らしく生きる」という姿勢を選びはじめました。

このような時代の流れを逆手に取ったかどうかはわかりませんが、御上は「自助、共助、公助」(菅前総理代大臣時)を唱えはじめ、御上の責任を軽減する方向に進んだのです。

第一・自己責任、第二・共同責任、第三・公的責任ですよ、という訳です。

自己責任が最優先、次に中間共同体で責任を分け合う、それでもだめな場合だけ、公的責任を取りましょう。なのですが、本当はそんな余裕がないのが本音でしょう。

こうして「自分らしく生きる=自己責任」の時代に突入しました。

最も、個々がそれぞれ「自分らしく」を主張すれば、多様な問題への対応は困難になることは否めません。目的や夢に向かって個々がそれぞれ自分流の幸せを得ることができれば、それは理想です。ただ、これまで何か、またはどこかの傘下で依存することしか知らない者たちは、組織が作った道をレールに沿って歩いていれば安全を保障されていたので、そのレールを急に外されてしまうかも・・・、おっとっと・・・・となってしまったわけです。

これまでは、前を歩いている人の後ろをついて行けば自動的に生活が成り立っていたのに、並んで歩く列がなくなり、テンデンバラバラに自分の目的に向かって歩きましょう。となって、今更自分はどこへ向かって歩けばいいの?。

自分らしさを探求する能力もないまま、どこへ進むべきかわからず、頼るところもなくなり、そのことが「努力しなかった」「自己責任」ですよ!ということです。

ところが、その自分らしさを探すということは「知らなかった」以上に、実は生まれ持っての能力の差(遺伝)が影響しているということがわかってしまったのです。

誰かの後をついて行くことしかしてなかった者たちは、実は前の世代の親も同じように生きてきて、人生とはそういうモノという刷り込みがされ、子供にも遺伝している、ということでしょう。

ほんとに身もふたもない話です。

このことが「無理ゲイ社会」という異名の発端です。

「無理ゲイ」ガチャというのがあるということですね。
「無理ゲー」ガチャは、言うに及ばずピラミッドの底辺に位置する多くの大衆です。
つまり、大衆のほとんどは、自分らしさで生きる能力がない、ということでしょうか?

そんな風には考えたくないというのが本音です。

「遊びをせんとや生まれけむ」1,2,で触れましたように、そもそもピラミッドの構造に組み込まれてしまったことが原因なのではないのか?ということを投げかけました。

「遊びをせんとや生まれけむ」12,において、中国人の「寝そべり族」なる若者たちのお話をしましたが、その後よく調べてみると、彼らは社会的圧力、「過労」を拒否し、一種のレジスタンス行為として選択したライフスタイルである、というのです。

「過労」とは『996工作制度』のことで、朝9時から夜9時まで、週6日間勤務を強いられる労働環境のことです。

彼らはそのような割に合わないラットレースを拒否するべく、「寝そべり族」を堂々とライフスタイルにしているわけで、日本のような親にパラサイトした「引きこもり族」とは、異なる生き方です。

具体的には、❝不買房(家を買わない)、不買車(車を買わない)、不談恋愛(恋愛をしない)、不結婚(結婚をしない)、不生姓(子供をつくらない)、低水平消費(消費は低水準に)❞ 「最低限の生活を維持することで、資本家の金儲けマシーンとなって資本家に搾取される奴隷となることを拒否する」といったポリシーである。

「寝そべって衝撃を乗り越える」、すなわち低欲望を選び、立身出世や物質主義に対して無関心の態度を取ることを選択したとされる。

小説家の廖善虎は「寝そべり」を抵抗運動と表現し、ニューヨークタイムズは中国のカウンターカルチャーの一部と呼んだ。 また、同時期にアメリカ(および西欧世界)で始まった「大辞職」と比較されている。 中華人民共和国教育部付属の国家言語資源観測研究センターは、この言葉を中国インターネットにおける2021年の10大流行語に挙げている。中国の検索サイト捜狐も、2021年流行語リストのトップにこの単語を挙げた。

日本におけるひきこもりと異なり、「寝そべり」を支持する中国の若者は社会的孤立しておらず、単に職業や経済的な野心を低くして目標を単純化しながらも、自分にとって財政的に必要な生産を得ており、経済的物質主義よりも心の健康を優先させることを選択している[15]。

『NHKスペシャル』によると、寝そべり族に対して共産党は「社会の発展を阻害する」として問題視している

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8引用

同時期にアメリカ(及び西欧諸国)で始まった「大辞職」は、「大退職時代(The Great Resignation)」、 アメリカで多くの労働者が自らの意思で職場を去っている状況を、テキサスA&M大のアンソニー・クロッツ准教授が名付けたものです。

アメリカではコロナによるシャットダウンで多くの人が解雇されました。経済再開後も人々が職に戻らない、それどころか新たに仕事を辞める人が続出している状況が「大辞職時代」と呼ばれているのをご存じの方も多いでしょう。

これが当初考えられていたような一時的なものではなく、コロナをきっかけに「働く」という意味自体がまったく変わってしまったと捉えられ始めています。さらにこの大辞職は「労働者全体のストライキ」であるとする有識者さえいるほどです。

I QUIT.」=「仕事を辞めました。」というタイトルの動画が、ここ数ヶ月続々とYouTubeに挙がっていることをご存知でしょうか。

パンデミックが発生し約1年半が経過した今日、アメリカでは自ら会社を退職する従業員が続出する「大辞職時代」が到来したと言われています。連日のようにニュースでも報道されているので、既に耳にしているかもしれませんね。

数字で見る大辞職時代
米国労働局発表の求人異動調査(JOLTS │ The Job Openings and Labor Turnover Survey)によると、自発的に会社を退職した労働者の数は、2021年8月に月間400万人を超え、2000年の調査開始以来、最高の離職率に達しました。
この現象を、テキサスA&M大学経営大学院のアンソニー・クロッツ准教授がGreat Resignation(グレート・レジグネーション、別名 Big Quit)」と命名しました。

様々な見解がありますが、中でも注目すべき5つの理由を挙げてみます。

燃え尽き症候群
最も頻繁に提起されるのが、燃え尽き症候群(バーンアウト)です。
例えば、パンデミック中に強いられた少人数体制や人手不足による、長期労働や負荷の多い働き方で疲れきってしまった。
リモートワークにより仕事とプライベートの境目がなくなり、朝から晩までの勤務を強いられ、大きなストレスを抱えてしまった。など、責任を感じ頑張ってきた社員が、離職を決断するケースが多く挙げられるようです。

柔軟性の欠如
物事がリモートでも運用可能だと証明された今、出社を求められないフレキシブルな勤務形態を求め転職をする人が多く見られます。こちらも上記同様、辞職を助長する主たる理由として挙げられています。

世界最大級のクラウドソーシングサービスUpwork社は、4,000人を対象に行った以下のようなおもしろい調査結果を発表しています。

  • 減給してでもリモートワークをしたいか?:YES 24% / MAYBE 35%
  • 出社を強要された場合、転職を希望するか?:YES 15% / MAYBE 20%
  • 出社を強要された場合、フリーランスもしくは自営業を希望するか?:YES 20% / MAYBE 30%

 人生観の変化
パンデミックを経験し、人生や死について、そして自身の生活、家族、仕事についてこれまでにはない形で向き合うようなった方も多いはず。

英系の大手人材会社Hays社が2万5,000人を対象に行なった調査によると、実に7割以上の人がコロナ禍をきっかけに現在の仕事やキャリアを疑問視するようになったと回答しています。

「人生一度きりだから、本当にやりたいことを追求したい」
「納得のいかない給与しかくれない会社で悠長に働いていられるほど、人生長くはない」
そういうYOLO(You Only Live Once)的な考えを持つ人が増えてきているのかもしれません。

空前の売り手市場
様々な制限が緩和され始め、人々の経済活動が元に戻りつつある今、多くの企業が一斉に採用活動を再開。求人件数も右肩上がりの状況が続いています。米国労働局の調べによると、2021年7月には1,100万件と過去最高値を記録しました。
時代は圧倒的な、究極の、売り手市場に突入しています。

安全性への懸念
パンデミックは落ち着きつつあるのかもしれません。しかし決して、過去の出来事ではなく、今も我々の生活の一部であることは言うまでも有りませんね。以下のように、安全面・健康面の観点から退職に結び付くケースも一定数存在するようです。

職場の感染対策不安を感じる為
自身が出社することで菌を持ち帰り、家族を巻き込みたくない為
居住の州や市、雇用主にワクチン接種を強要された為

「大辞職時代」の到来~The Great Resignation~ | STS Career 引用

 

このように世界的に「働かない生き方」の傾向が強まっているなか、日本の状況を観ると、日本では、そういったレジスタンスの動きは他国よりも鈍く、

例えば『自分の国や社会をかえられると思う』と考える若者は

日  本   18.3%
アメリカ   65.7%
中  国   65,6%
インド    83.4%
インドネシア 68,2%

日本財団「18歳意識調査」 Hack the word より

何とも心もとない数字ではありませんか。

 

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