兄と奏でるノクターン

 

NHK ドキュランド 「兄と奏でるノクターン」(2020年11月13日放送)を見て


 知的障害を持ちながら、音楽の才能を開花させていく兄ウン・ソンホ(32歳)と、弟ウン・ギョンギの密着ヒューマンドキュメント。

兄ソンホは身の回りのことはほとんど自分ではできない。そんな兄にかかりっきりになる母への疎外感を持ち、同じように音楽の才能を持つ弟のウン・ギョンギは、同じくピアノを弾けるが音大を受験するも落ちてしまい、母親と兄への苛立ちが大きくなっていく。

 

兄ソンホはピアノ、クラリネット、バイオリンを弾きこなすけれど、顔を洗うこともおぼつかず、髭を剃るのも母の仕事だった。

 

 

障害児の可能性を伸ばすために奔走する母親の愛情差別に嫉妬し、弟ギョンギは職を転々とする不安定な生活を送り、母親の言いなりに生きていけば良い兄に冷たい態度を変えようとしない。兄を馬鹿にし、母には暴言を吐く日常に、本人自身もウンザリしていた。

ギョンギは「僕が障害者だったら今より幸せに生きられる」と言う。そして、障害者の兄ソンホと同じくらい時間とお金を母が自分にかけていたら、今頃僕は成功していたと語る。

 

 

そんな中、ギョンギは母の代わりに兄のロシア演奏旅行に同行することになる。演奏以外には何一つできない兄ソンホの面倒を見るギョンギ。兄のソンホは至れり尽くせりの母がいない海外演奏旅行に不安を隠せない。そんな二人をカメラは丁寧に追う。

そして迎えた本番当日、緊張しながらも弟ギョンギは、兄の髭剃りやタキシードの着付けの世話を、かいがいしくする。今日はのソンホはクラリネット演奏。そしてピアノ演奏をギョンギが担う。

息の合った二人の演奏。ギョンギは初めて曲に乗せて兄と語らうことができたと感じていました。心を通わせる二人。兄が「大丈夫だ、俺についてこい!」と言っているように聞こえたのです。初めて兄が兄らしく見えた瞬間でした。

会場は湧き、アンコール! 曲は何と「風笛」でした。
そして兄と弟はこれを機会に、二人が助け合って、互いの幸せを成就してゆくことでしょう。思わず涙しました。機会があれば是非見て欲しいドキュメンタリーでした。

 このドキュメンタリーで「言葉は不完全」ということを再認識しました。。そしてそれを補う人間の関係性には「嘘のない媒介」が必要なのでは?と。音楽がその役割を果たしたドキュメンタリーでした。

 

 

 

 

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