『快三昧に生きる』 【17】

2020.9.28

視点が人生を創る

「出過ぎた杭は打たれない」ために・・・同調圧力、空気などの日本的文化形態が、人々や社会、国の進展にもたらす影響は、今後ますます負の働きに傾くことをお話してきました。そして私たちは何かに依存するやり方ではなく、一人ひとりが自律し、自己のビジョンに沿って「キャリアプラン」(働き方・生き方)を確立し、相応にスペックを向上させることを求められています。

キャリアは、考え方や働き方などの人間性面からも考えることができます。働くことに関わる過程や生き方そのもののことを指す言葉です。
「何を大事にしてどんな生き方・働き方をしたいのか」ということを明確にしておくことで、筋の通ったキャリアを築くことができるはずです。仕事だけでなく人生を通して何を経験したいのかという視点を持つこと。これまでのキャリアとこれからのキャリアビジョンをはっきりさせることで、より具体的なキャリアプランが見つかるはずです。

「キャリアとは」

 そのようなキャリアプランを構築するには、自己の視点を知る必要があります。
自己の視点とは、観点であり、観念を形成しているものです。よって信念も同じゾーンに含まれます。思想、信条、といったものです。
思想はただ思考するだけではなく、人が現在生きている世界や人間の生き方についてのまとまった見解のことで、自分が考えつくことや考えることを顕しています。
信条は、自分が何か行動を起こそうとしているときに、なぜその行動を起こそうと考えるに至ったのか誰かに伝えるものです。

殆どの場合、自己の視点を意識することはなく日常生活を何気なく暮らしているのが普通です。
なぜなら、日本人にとっては、空気を読む、世間の目に気を配るときには却って邪魔になり、そのために視点や主観は無くても全く問題なく世の中を渡っていけるからです。

それでは、日本人に視点はないのか?というと無いわけではなく、視点が自己の外側にある、と言うだけです。自己の外側とは、「他者及びその集団」です。他者やその集団から排除されたり拒否されたりすることを一番怖れ、常にそれらの承認を得る事だけに注意を払っています。それゆえ、いつも自己の外側に意識を向け、他者の顔色を伺うことに精通はしても、自己の内側に意識が向くことがないということです。

自己の内側とは、自分の「快」「不快」に基準を置くことです。「自分がやりたい事」「自分が好きな事」「自分が面白いと思うこと」「自分がこうなりたいと思う事」に視点を置きそれを追及します。

前者の生き方が常の人にとって、「それはないでしょ!そんなことでは生きられない。世間はそんなに甘くない」という声が聞こえそうです。
そう、それが視点であり観念なのです。
そのような視点、そのような観念があなたの世界を創造し、「世間は甘くない」に関わる体験を実際に経験しているのです。そしてその体験がますますあなたの観念を強固にして信念にまで成長させています。

つまり、視点とは「信じていること」です。
一般的には「体験」したから「信じる」と思いがちですが、「信じている」と「体験」はインタラクティブな関係で、「信じている」からそのことが現象化し、現象を「体験」するから、「信じる」が強化されると言うスパイラル効果の仕組みです。

そのため自分が体験したことが、普遍的な正解と思い込むのは問題です。
同じ事柄を信じていない人は、その体験を引き寄せる状況を作り出さないのです。
「そんなことでは生きられない」と思えば思うほど、そのような現実や情報を見聞きし、体験します。そして同じように考える人たちを引き寄せ、普遍的と言えるのでは、と勘違いします。それは普遍的に存在するのではなく、「信じる」ことが現象化しているということです。もし全く逆のことを、例えば「人生は楽園」と超ポジティブ信念を持っていれば「人生は楽園」と感じる体験を多くすることでしょう。「信じれば救われる」も同様の効果です。

日本人には宗教がないとよく言われますが、これ「周りから、はみ出さない」は立派な「信仰」です。この信仰は日本の国の隅々まで行き渡り、日本人の心を支配しています。

戦前、戦中のプロパガンダの標語、スローガンなどの影響が、戦後まで影響し、「国民一丸」精神が刷り込まれ、みんなが同じ、はみ出し者は許さない、国のお蔭で存在する自分(個人より国優先)という「尽忠報國」(忠誠をつくして国に報いる)「撃ちてし止まぬ」(敵を撃ち砕いた後に止めよう)「一億玉砕」(無為に生き永らえるな)の国策が信念になったことによるところが大きいでしょう。つい最近でもコロナ禍のスローガンにも「国民一丸」が使われています。

とはいえ、私たちは知らないうちに信じる「何か」を土台にして生きています。「信じる」ことそれ自体を拒否することはできません。

宗教のような神格化の存在だけが信仰ではなく、「常識」や「お金」を信じたり、「愛」を信じたり、ある種の思想や哲学を信じたりしています。「信じる」は「好き」または「自分にフィットする」にもつながります。

なぜ「信じるか」?
体験が一番大きな要素になりますが、体験する以前に、自分が信じる人からの刷り込みによって「信じたい」から始まることがあります。

子供時代には親の影響が最も強く、親が信じていることを鵜呑みにすることはよくあることです。親が世間(多数派が正しい)を信じている場合は、自動的に世間に目が向き、意識するようになるでしょう。

現在、自分が何を信じているか?を紐解くことは、簡単なようで、なかなか手ごわいものです。信じていることは全ての判断の基準になっているので、その基準へ目を向けることは無いからです。それが無意識に刷り込まれていることです。無意識を意識するのはなかなか大変です。

判断の基準がないとき、人は自己の体感によって動くものですが、往々にして子供の頃にはそうした動きを禁止されたり、叱られたりします。叱られることによって嫌感を感じ、以後は嫌感を味わいたくないために、親の言葉や行動に目を向けるようになり、それが基準となるというメカニズムが働きます。
その刷り込みが後になると自分の人生を楽しくしない原因となって、邪魔をする場合もあることを知ってください、無意識に刷り込まれていることは、完全に信じ切っていること、ということだけでも認識することが大切です。無意識に行動するのは信じきっていなければ行動に現れないからです。

特に昭和生まれの親は「昭和キャリア」に染まっていることが多く、その子供たちも影響を受けているはずです。以下に「昭和キャリア」とは正反対の「プロティアンキャリア」について紹介します。

働き方の変化

プロティアンキャリアについて【11】で少し触れました。

プロティアン・キャリアは、「環境の変化に応じて自分自身も変化させる柔軟なキャリア」を意味するキャリア理論の一つです。(アメリカの心理学者ダグラス・ホール提唱

社会が変化するので、個人のキャリアも「こうしたら正解」というモデルが無くなるわけです。ですから、社会の変化に応じて個人も変化しなければならない!と述べているのです。
これまでの昭和的なキャリア観と比較してみましょう。

昭和的キャリア観(山登り型)
スタイル:1つの会社で働く(終身雇用)・会社に尽くす
価値観:社会的成功(地位・給与)を望む
生存戦略:社内で生き残る能力が必要

プロティアン・キャリア(カメレオン型)
スタイル:転職が当たり前・会社に依存しない・柔軟な働き方
価値観:個人としての成功を望む
生存戦略:どこでも通用する人材になるため、市場価値が重要

これまでの昭和的キャリアは山登り型で、「目標に向かって」「計画的に生きる」。
一方でプロティアンキャリアはカメレオンのように「状況に応じて柔軟に変化すること」を大切にしています。
社会が変化しているのですから、目標設定して計画的に生きることが難しくなったんですね。

プロティアンキャリア

地位や給与を重視し、一組織内でのステップアップを中心に考える従来のキャリア像とは異なり、自己成長「自分は何がしたいの?どうなりたいの?」を大事に”主体的”な生き方を問うキャリアづくりを目指します。

主体は”個人”『プロティアンキャリア』

出典:NewsPicks 田中研之輔「今、再評価されるプロティアン・キャリアとは」(https://newspicks.com/news/3607208/body/) 更に詳しくは

プロティアンキャリアと従来のキャリアの違い【表】

項 目 プロティアンキャリア 従来のキャリア
主体者 主体は”個人” 主体は”組織”
価値観 “自由・成長”を重視 “権力・昇進”を重視
尺度 “心理的成功”が中心 “地位・給料”が中心
移動頻度 高い 低い
姿勢 “満足感”が重要
専門的コミットメント自分を評価できるか
“組織評価”が重要
組織から尊敬されているか
アイデンティティー “何がしたいか”を問う

(自己への気づき)

“何をすべきか”を問う

(組織への気づき)

アダプタビリティー
(変化への適応力)
市場価値を高める

仕事関連の柔軟性

市場へのコンピデンシー(ハイパフォーマー行動特性)

組織で生き残る力を高める組織関連の柔軟性
組織内でのサバイバル

注)アイデンティティ (Identity):自分が自分をどのように見ているか。価値観、趣味、能力、一生を通した自己概念。
・  アダプタビリティー (Adaptability):変化への適応スキルと適応モチベーション。

個人を主体として、環境・組織などの外部ではなく、自分自身の内部を大切にしていることがわかります。「何かを成し遂げること」ではなく「どんな状態の自分が幸せか」に観点を変えた理論です。

 以下6つの方法で、目標をつくるための材料は集められます。

①幼少期に夢中になっていたことを思い出す
②長時間できることを考えてみる
③人より簡単にこなせることを考えてみる
④周りに”自分の良いところ”を尋ねてみる
⑤嫌いなこと洗い出してみる
⑥新しいことに挑戦する

主体は”個人”『プロティアンキャリア

「一つの会社で一生働くことが正義」
「会社(組織)のために尽くすことが美徳」
「転職するのは、負け組である」
と考えている皆さん、その常識は通用しない時代に突入しています。これからは↓

  • 複数の組織に所属するいくつもの組織を移動する自己理解(アイデンティティ)を深める変化に対応する能力(市場価値)を持つ変化に対応する意志(モチベーション)を持つ/

    あなたが絶対に避けたいものは?直感で!
    アットホーム 切磋琢磨 のんびり バリバリ じっくり育成 少数精鋭 競争・ライバル 議論 相談 協調 助け合う 非人道的 躍動感 淡々と 規律 華やか 素朴 鬼軍曹 不衛生 親会社からの制約 サークル感 チャレンジ 変化 安定 プロ意識 若い 熟練した スピード感 丁寧 おおざっぱ 着実 明るい 落ち着いた 固い まじめ ユーモア できなくてもやってみろ 確実生を求める 閉鎖的 官僚的 風通しが良い 穏やかな プレッシャープレッシャー 営業成績 個人主義 チームワーク 根性 楽しい 自分の仕事に集中 和気あいあい 責任が大きい 優しい 厳しい 安心 快適 真剣 笑い 改革 効率化 歴史を守る その他

/主体は”個人”『プロティアンキャリア

このような自己分析によって「自己の本質を認識する」そして一体自分は何をすることが楽しく何が負担になっているのか?どんな人生を望んでいるのか?を知ることから始まるのが、プロティアンキャリです。【15】で触れましたHOWからWHYへの転換です。

従来のように、自分の前を歩く人を見逃さないように、という視点(HOW)からは、何も生まれません。行く先も、目的も、自ら決め(WHY)、自らの意思で動き、自らに責任を課す。そうすれば誰にも文句を言えず、誰にも責任を転嫁することができない。その代り自分の好きなように楽しみながら仕事も生活もエンジョイできる。と言うライフスタイルに変化します。これは依存型から自律型への転換でもあります。

「快三昧に生きる」【16】

→「快三昧に生きる」【18】

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