『快三昧に生きる』 【15】

2020.9.14

常識革命  藤原尚道

「進化心理学・脳科学のレンズを通して政治・経済・一般常識を読み解く」
「近頃の若い者は」と口にした時点であなたは負け組の仲間入り

~ゆとり世代の生き方には新しい時代に適応するヒントが満載

ゆとり世代には企業文化を革新する救世主となる資質を備えている

高度経済成長の成功体験を引きずって平成の時代を“失われた30年”にしてしまった日本社会にとって、“ゆとり世代”がもつ合理的な考え方は、社会の閉塞感に風穴を開けるカンフル剤になる可能性をもっている。

“ゆとり世代”は、精神論や筋の通っていない非論理的なやり方には納得しない。「昔からそうだった」という理由だけで、ろくに意味も検討されずに残っている「必要のない会議や朝礼」「付き合い残業」「誰も見ていない報告書」「手書き書類」「ハンコ」「服装規定」などの慣習に、堂々と嫌な顔をする。これは「生徒自身で考える力を養うこと」を目的として導入されたゆとり教育の素晴らしい成果である。昭和に社会人になった私たちは、戦前から続く「努力=嫌なことや苦手なことを克服すること」という精神論の下で、年長者に言われたことには自分であれこれ考えたりせずに黙って従うように教えられた。一方で平成生まれのゆとり世代は、教えられることをただ暗記するだけではなく、十分ではないにせよ自分自身で考えるチャンスをより多く与えられ、個性や才能、独創性を以前ほどにはスポイルされていない。

二刀流メジャーリーガーの大谷翔平選手や将棋の藤井聡太7段、卓球の伊藤美誠選手など、「ゆとり教育」を受けた世代が従来の常識を打ち破る活躍を見せてくれている。「最近の若者は」と口にした時点でその人の思考は停止し、時代の変化から取り残されていく。“ゆとり世代”は時代の変化への適応として生み出されてきたのだ。「答えをすぐに求めて、結果への近道を探そうとする」姿勢は「生産性向上」につながる。「上司との酒や、休日開催の会社行事はきっぱり断ってプライベートを優先する」ことで社外の人脈とネットワークを広げる活動は「多様で変化に富んだアイデア」を組織にもたらしてくれる。「上昇志向の少なさ」は「人としての幸福とは何かを真剣に考えるものが増えている」証拠でもある。私たちは文句を言うだけではなく、彼らから学ぶこともできる。“ゆとり世代”と呼ばれる彼らこそが、日本の組織が変化に適応して活力を取り戻すためのカンフル剤になってくれるだろう。

「近頃の若い者は」と口にした時点であなたは負け組の仲間入り
~ゆとり世代の生き方には新しい時代に適応するヒントが満載~

そうなんです、変化はゆとり世代から始まっています。ゆとり世代と重なるミレニアル世代の特徴を、以下の項目に分けて紹介します。

デジタルネイティブ
ミレニアル世代の最大の特徴は、デジタルネイティブであることだ。
デジタルネイティブの世代は、インターネットをツールとしてではなく、ライフラインとして接してる。そのため、コミュニケーションの取り方や価値観がこれまでの世代とは異なる。
デジタルネイティブの特徴としては、インターネットを通じて人と知り合う、対面のコミュニケーションが苦手、まずはインターネットで検索する、の3つが挙げられる。

[14]参照

ミレニアル世代の特徴とは。世代の違いや接し方を解説

このように、ゆとり世代での教育により「自分で考える」という、新しい習慣が身に付き、おいそれと大人たちの枠に迎合するのではなく、そのことについても自分なりに考え、不条理や納得できないことは受け入れない姿勢をとります。

「黙って従え」と言われて、その通り従ってきたオジサンたちは、それまでの常識を無視され、立つ瀬がなくなり反感を買うというわけです。しかも彼ら(若者たち)の方が論理的、科学的整合性に乗っ取った筋の通るロジックを展開します。オジサンたちは益々自尊心がズタズタになり、逆鱗に触れることになります。
これと言うのも、スマホによってITが広く浸透し、いつでもエビデンスを収集して、論理的回答が得られるというデジタルネイチャー化によるもので、「従う」ことだけに一生懸命になってきたデジタル音痴のオジサンたちはタジタジになって当たり前です。できるだけ早くそのことを認識する方が、傷を深めない方法のように思います。

HOWからWHY

一億総〈HOW〉症候群
団塊世代前後の旧来型の大人たちはHOW〈どのように〉ばかりを追いかけてビジョン(=なぜ、なにを)を持たない。そんなオジサンたちに支配下にいる部下たちは「もうどうしていいかわからない!」と叫ぶ。一億総〈HOW〉症候群。それが日本人の実態とも言えるでしょう。自分の思考法を〈HOW〉から〈WHY〉へと転換すること。「どのように」「どんなふうに」と考えがちなところを、「なぜ?」と考え直してみるのである。そういう癖をつけるのである。

〈HOW〉から〈WHY〉へ転換する

心配はいりません。自転車だって、逆上がりだって、車の運転だって、無意識に浸透すれば自動的に稼働します。

師匠・杉本昌隆が語る、藤井聡太二冠「常に自分で考え、楽をしない性格」
8月30日(日)の放送は、 加藤一二三、杉本昌隆、竹俣紅が登場。藤井聡太二冠の活躍もあって、現在、将棋界が大きな注目を集めている。そこで、将棋人気をけん引してきた加藤九段、元女流棋士の竹俣、藤井聡太二冠の師匠である杉本八段が、将棋の世界で長く活躍してきた3人だからこそ語ることができる、・・・・詳細“将棋の魅力”について語る

元女性棋士 竹俣紅が語る幼少期
2008年、小学4年生の時に日本将棋連盟主催の第1回駒姫名人戦優勝
後にフジテレビアナウンサーに転じる。

番組の中で「天才」について竹俣はどんな素質があったかのコメントを求められ、「幼い頃から一人遊びが得意、幼稚園の砂場の底がどうなっているか確かめたくて、どこまでもどこまでひたすら夢中で掘った。やがて砂場の底が見え納得した」と「どうなってるの?」の興味が既に備わっていたということです。

幼稚園時代から、「考える」「確かめる」癖がついていた。そういった素質が、自己世界構築のエネルギーになるのでしょうね。
〈WHY〉の追及こそ、日本人の素質を大幅にアップグレードし進化を促すキーワードかもしれません。

「なぜ?」「どうなってるの?」「どんな仕組み?」という疑問は、好奇心に起因します。好奇心は自分の世界を創る起爆剤です。疑問、好奇心から創造が生まれるのです。個々の世界が構築できれば人生は面白くて仕方なくなります。寝食を忘れて没頭できる一人遊び世界、それこそ「快三昧に生きる」の実践です。

「死にたい」と嘆く中高生の世界を覗くと、「自己肯定感がない」と言います。「誰かに必要とされなければ光のあたるところに居られない」と。これが病気でなくて何でしょう。
「必要とされる人間になりなさい」という圧力を、親や先生から受けてきたのでしょう。承認欲求中毒、認められたい症候群の重篤な患者に見えます。どんなにかくるしいことでしょうか。

こうして大人たちは若者たちに「死にたい」と考えるようになるほど「必要とされる人間」という「称賛される価値観」を植え付け、疑問や好奇心の芽を出さないようにしてきたのです。

もうそろそろ、大人たち自身が気づくべき、そして従来の価値観を見直すべきではないでしょうか。「面白いことは趣味だけ」という考え方を!「仕事(勉強)は苦しいもの!」という考えを!そして「苦しみに耐えることの美徳」を!このような枠組みでできた社会を!中高生という思春期の時代に、「死にたい」と思わせるような社会を創ったのは誰か?を。

「称賛される」から「興味を追及」の方が、はるかに楽しく、面白く学習できるはず。

日本の政策で唯一救われる「ゆとり世代」の教育は、「独自で考える」「疑問を持つ」そして「掘り下げる」教育でした。今、私たちは「ゆとり世代」から学ぶべきことが沢山あるということを認識しようじゃありませんか。

「快三昧に生きる」【14】

→「快三昧に生きる」【16】

この記事をシェア:

コメントはこちらから

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です