意識のちから

「フィルター」が創る世界(3-1)

3意識の拡大が人生を価値あるものにする―その1 

『SUPER BRAIN』(ディーパック・チョプラ著)より

ノーベル賞を受賞した生物学者ジェラルド・エデルマンは、脳内の神経回路の数は、10の後ろに0を百万個並べた数にまで及ぶと指摘している。既知の宇宙に存在する粒子の数の推測値が、10の後ろに79個並べた数であることを思えば、これはとんでもない数字である。
 
スーパーブレインの英雄,アインシュタインは三つの強みを育て、三つの妨げを回避した。

三つの強み・・・・リラックスすること。素直でいる事。心配しないでいること。

三つの妨げ・・・・習慣に縛られること。条件付けされていること。硬直した状態でいること。

 アインシュタインの強いモチベーションは、自然の神秘を前にしたときに感じる畏敬と感嘆の念から生まれていた。
 赤ん坊たちが確固としていて、幸福な状態でいられるのは、上機嫌で生まれているからではない。赤ん坊であろうとなかろうと、昨日の経験を更に広げていけるなら、今日という一日は、まったくの新しい世界だと言える。赤ん坊は活動を停止することもないし、時代遅れの古い条件付けに縛られることもない。前日に脳が何を吸収したにせよ、新たな地平線が開けていく場所に常に身を置いている。歩いて、話して、関わり方や感じ方を学んでいく。しかし私たちは無垢な子供時代を懐かしがるようになる。何かを失ったように感じる。赤ん坊が豊富に持っていて、私たち大人が失ったものとは何だろうか?

 精神医学者ダニエル・シーゲルによって提唱された専門用語「SIFT」は、吟味することで、感覚で受け止め、思い描き、感情を生み、思考することを意味する、それぞれの頭文字を並べた造語。

S ― Sensation(感覚・感動)
I ― Image(映像・心に描かれた姿や形)
F ― Feeling(感情)
T ― thought(思考)

 これらのバランスが保たれると、

・自分が自分らしくいられる安全な場所を創りだせる。

・その安全な場所に招かれた人も自分らしくいられる。

・自分自身について、知りたいと思う。

・否定してきた部分に目を向け、受け入れがたい真実を受け入れ、現実を直視できる。

・自分が抱える負の側面と友としてうまく付き合える。負の側面は秘密の協力者でもなく、恐ろしい

 敵でもない。

・罪悪感や羞恥心を正当に評価して癒すことができる。

・より高い目的意識が芽生える。

・希望を持っている。

・他の人のために何かしたくなる。

・より高次の現実像が、現実的で実現可能に思えてくる。

 人は何よりもまず、意識的でいるために脳を使う。中には、自分の意識を他の人よりもはるかに上手く使いこなす人もいる。英雄として紹介したい内面的成長の達人たちは、どこの生まれであろうと、みな人類の精神的指導者たちである。なかでもブッタは際立った英雄であり、人間の完成された姿を体現する成人、賢者、リーダーの象徴ともいえる存在である。人生の意味を考えながら生き、最高の価値を求めるに至る。価値は内ら生じ、俗世の域をえる。五感に流れ込む情報には意味がない。

 旧石器時代の洞窟に住む人々や昔の狩猟者や採集者たちの短くも過酷な人生について調べていくと、彼らの脳に、計算力、哲学や芸術を生み出す力、高度な理性が備わっていたことは疑いようがない。人にはこうした能力がすでにあった。そしてブッタはさらに、私たちが人生の意義を知りたいと願いさえすれば、人にはまだまだ秘められた力が眠っていることを教えてくれる。

 その鍵を握るのが、意識を広く持つことである。

経験の種類は問題ではない、はっきりと意識した状態で経験することが意識を広く持つ前提となる。人間は誰もが意識的である。問題はどの程度意識的でいるかだ。宗教や神秘主義の意味合いを完全に抜きにしても、ブッタが体現する意識をより高めた状態は、誰もが本来受け継いでいることの一部である。

 インドの古い諺では「意識は戸口の明かり」に例えられる。家の中と外の世界を同時に照らすように、意識は「外の世界にある」ものと「心の内にあるもの」を同時に感じ取ることができる。そのような意識の覚醒した状態が、両者の間に一つの関係を生みだす。

 人間の心に宿る天国も地獄も、すべては志向の産物である。地獄に落ちようが極楽に行こうが、あなたが考えることだ。「危険か安全かは心の持ちよう」という金言もある。しかし、危険で物騒な考えにせよ、安心で信頼できる考えにせよ、それらはどこからくるのか?それらはすべて目に見えない意識の領域で生じる。心にとって、意識が覚醒された状態は、創造の源である。価値ある人生に達するためには、より意識的でいるための方法を見つけ出さなくてはならない。そうすることで、ようやく、自分の運命の書の著者になれる。

 今回は、脳の回路を自在に再構築するために「意識のちから」が重要であることを知りました。特に、意識的であることでバランスがとれてくると、上記に提示されている10のメリットが実現されることは間違いないものです。チョプラ博士は、 “経験の種類は問題ではない”‟どの程度意識的でいるか?”ということを問題にしています。「自分の心を覗く」ということで、価値ある未来に障害となる、ネガティブ思考の原因も見えてきます。それが往々にして、古い固定観念であったり、周囲の圧力や常識であったり、過度な協調意識であったりする場合もあります。そういったものが見えてくればそれをどう処理するかは自分次第ということを知るでしょう。自分にとって一番大切なものに沿ってさえいれば、それが一番自分にとって価値ある人生を選択していることである、と知るでしょう。もし、あなたが“他人から排除されないこと”が一番大切なことであれば、自分以外の他人たちの期待にあわせて生きることになるでしょう。ですが、それは自分の運命を他に託すことになる、自分の運命の書の著者を他人に譲る、ということを知れば、大切なことが変わるかもしれません。

 

 

 

Comment

野宮

今日の「フィルター」が創る世界3-1で一番ピンときたのは「SIFT」だね。
まず日常の生活の中でも、何気なく感覚を研ぎ澄まして観察していると、
1、何となくいつもと違う感覚にとらわれることがあり、そんなことに違った形で感動することがある。
2、すると心に自分なりのイメージ(映像)が出来上がり
3、それをもつと知りたい、あるいは経験してみたい、などと感情が動き
4、いつもより違った感覚で、深く考えてみる。
なんてことがあるよね。
これは、うまく自分の心の中を言い当てられたような気がします。

返信
myosho

いつもコメントをありがとうございます。
確かに「SIFT」の経路を通過しなければ、何も記憶に定着しない、つまり外からの情報を痛みや喜びとして感じたり、視覚的に描いたり、嫌だ、嬉しい、と思ったり、考えを巡らせたりしているというごく自然な工程を改めて認識しました。これを突き詰めれば細胞レベルに行きつく。気分が沈むときも、素晴らしい考えを思いついたときも、身の危険を感じるときも、すべてに細胞が関与している。厳密には心と身体と外界のバランスをとる自己制御回路が細胞を介して一つの機能として働いている。入力データが神経系を刺激する。応答が起きる。この応答についての報告が各細胞に向けて送り出され、その報告についてどう思うかという返事が細胞から送り出されるということなんですね。

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