『17歳の帝国』を観て 2

 その原因には、日本文化が大きく影響しているのではないかと思いました。
そもそも現代日本の文化には『幸福追求』の意識はあるのでしょうか?

生まれた目的は「社会貢献」「富と名誉の獲得」、其の結果が「成功、失敗」。

その構図の基に成功者を目指す激烈な競争と戦いを続けられる強靭な精神と肉体を創るために「幸福」などという甘い意識では勝ち抜くことはできず敗者の闇に落ちるしかない。という価値観が根底にあるように感じています。特に昭和世代まではこの価値観上で社会は動いていたのではないのでしょうか。その様子は『17歳の帝国』の中でも老人と若者ヴァーサスとして中心的課題が描かれています。

 2話からのみどころ

白井秘書の日記
ナレーション:<成功が 多くの人を駄目にした。 ベンジャミン・フランクリン>

鷲田総理は真木の存在をうとましく思い、平に「とんだ爆弾じゃないかね。白井君のことで私を恨んでいるか。徹底的に調べなさい」と命じる。

鷲田総理は過去に不正献金疑惑がった。その当時の秘書白井一家の車が東京湾に沈んでいたが、信実は解明されず一家心中と処理されたその時10歳で死んだ白井ユキは真木の幼馴染で一番大切なひとだった。

真木は過労と栄養失調で倒れて病院へ。3日の入院が必要となった。
真木内閣への現在の支持率は51%。転職した人たちの幸福は平均すると約5.3ポイント アップ。事務手続きにかかっていた時間がきめこまやかな対応に充てることができた。

内閣が使用する建物も改修工事が入るため、立ち入り禁止となった。

平は記者の山口から「白井さんは日記をつけてた。あの頃、さんざん取材したけど結局分からなかった。 もう処分されたかもしれない。 みんな それを探してる。」と情報を得る。

 再開発計画について
真木が復帰して閣議が再スタート。そして静養期間に思ったことを伝える。

真木:「病院のベッドの上で考えたことがあります。ウーアでは皆さんの幸福度をはかっていますが、幸福とは何だろう。…生きがいや仲間があること。仕事や収入があること。健康であること。数字上の平均的な幸せではなく、一人一人 それぞれ違う幸せを考えていきたいと思います。」

新しい再開発計画についての討議が始まる。

ヘキサ案は20代・30代の支持が高く、ノナ案は自然の豊かさをうまく生かして65才以上の高齢者に人気だ。高齢者の強い関心は50年前に途絶えた「青波祭り」にある。過去への郷愁は現在の幸福度低下の現れとも分析できる。

高齢者の幸福度は若い世代よりも低くなっている。欧米だと年をとると幸福になる傾向があるが、日本の高齢者は社会的孤立感を深め、報われない思いを抱いている…とソロンが分析。

真木内閣は、両方の案の良い点を両立することを目指すことになる。そして鷲田大臣がソロンと一緒に最終案を作ることになった。

そんな鷲田照だが、元市長の保坂から「平君は頼りにならん。あの17才を切るんだ。」と命じられる。

 逆効果のデモ行進
官邸前で、保坂や佐伯たちが「真木総理やめろ~!」「青波市を返せ~!」とデモをする。元市議や高齢者たちが大勢、抗議していた。「大体ソロンって何なんだ!使う気にもならん。」と真木に訴える。

しかし逆効果だった。中継を見た住民が「老害」 「元市議なのに自分らのことばかり」 「辞めて正解」「17才の方がここのことちゃんと考えてんじゃん」 「お前らがバス無料なの許せん」とネットに書き込む。

Z世代の若者たちが言いそうなことですね。

 

それでも真木は、高齢者たちも住民として向き合おうとする。平が間に割って入り「AIのおかげで私たちの暮らしは格段に便利になりました。同じように政治にも使うことによって、ここにいる皆さんの暮らしをもっと幸せにすることができる。私はソロンと共に未来を創っていきたいんです。」と説明。

保坂たちは、自分たちがそのAIで幸せになっていないことを訴えた。真木は高齢者の意見も聞くことを約束。

青波市の伝説

水害の多かった青波市は7匹の青い龍に守られたという伝説があった。お祭りでは、空に帰った龍に感謝をささげるためにランタンを飛ばしたという。

真木たちが商店街へ聞き込みに行くと、今でも青いランタンを飾っていたり、昔は七龍神社から商店街を通って海まで神輿(みこし)を担いで行ったという。

ある日。鷲田総理がウーア内閣を訪ねる。真木の支持率は72%にもなっていた。鷲田は「本物の総理の椅子に座るつもりはあるのかね?」と問う。「僕には無理です。」と真木は答えた。ウーアの住民15万人でも精いっぱいだからだった。

その後、鷲田総理は平とともに保坂に会う。
そして、「やはり政治は人間がやるもの。AIなんかに魂を売っちゃいかん。そんな政治は駄目だ。ソロンは失敗です。」と告げて安心させる。帰りの車内で、鷲田は保坂の前だから言ったんだと平を安心させた。

このあたり現実にありそうな話で、リアル感ありますねー

鷲田:「(政治AIは)うまくいってるじゃないか。要らないものは切る。なかなか人間じゃできることじゃない。なのに なぜ あの17才切らないんだ?」

AIは個人的利益で動くモノじゃないってこと忘れてるね

平:「お言葉ですが総理。 彼には我々がもう失ってしまった…」
鷲田:「いいかげんにしろ! 17才の高校生に本気で入れ込むバカがどこにいる!ソロンが君に乗り移ったんじゃないかね?」

騙し、見返り、忖度、悪代官の要素たっぷりですが、現代の世間の常識なんですよね!

 平とソロンの面接(回想)

ソロン:「正義とは何ですか?」
平:「誰もが自らの幸福を追求できることだと思います。」
ソロン:「命より大切なものはありますか?」
平:「私は魂だと思っています。」
ソロン:「人生の価値とは何ですか?」
平:「何を得るかではなく 何を残せるか。それが私の人生の価値です。」

 17才のユキ?!
平はソロンの開発関係者の朝倉に、総理官邸の防犯カメラをつけてもらって確認。すると、本棚の奥に隠し扉があり、真木が頻繁に出入りしていた。そこへサチから平に電話がくる。補佐官を辞めたい、と。理由は、亡くなった人を AIでよみがえらせているのを総理官邸で見てしまったから。
平と朝倉は隠し部屋でスノウを呼び出すが動かない。そのため家にいるサチを呼び出す。サチに反応して目を開いたスノウは話しかける。

スノウ:「茶川サチさん。私はスノウ。あなたと同じ17才のユキ。ずっとあなたを待ってた。」
平はサチが持っていた道具を使って、データの取り出しに挑戦する。
茶川家で食事をご馳走になってから、真木が総理官邸に戻ってきた。真木は誰かがスノウにアクセスしたと気づく。

 

真木は海にいた保坂に会った。そして過去の青波市のデータを大量にソロンにアップした眼鏡を渡す。保坂は真木のことを邪険にする。

しかし真木が帰ったあと、眼鏡をかけた保坂は、昔の風景が海に映し出されて心奪われる。

真木は平が17才のときを聞いた。そのころ政治家になろうと思ったのか?そんなことはない、と平。真木は「スノウにアクセスしましたか」と確認。平が答えないことが回答だ。
真木はただ話す相手が欲しかったという。そして平がもし苦しんでいるなら救いたい…と告げた。

 平が総理になれなかった理由

ウーアの閣議室にて。
平が「どうして僕はウーアの総理に選ばれなかった?」と問う。

ソロン:「選ばなかった理由を説明します。あなたは私との対話の間、一度も本当のことを話していませんでした。唇・眉の動き・体温・声・心拍数。全てのデータがあなたが嘘をついていることを示していました。理想を語りながら、そこに真実はありませんでした。あなたは自身で気付いているはずです。あなたにもあったはずの大切なものを既に失っていることに。」

平は「僕の17才は…もう とっくに終わってる。」とつぶやく。

17歳を過ぎて大人になると皆、「嘘」にまみれてしまうんですね。
「嘘に」まみれてしまったら、「幸せ」何て考えられないのでしょうね。
ただただ上り詰める事しか頭にないんですから。

(C)NHK

平(星野源)は、7年前の献金事件の鍵を握る日記を手に入れる。そこには、鷲田(柄本明)政権を揺るがす重大な秘密が書かれていた。日記を携え、総理官邸を訪ねる平。一方の真木(神尾楓珠)は、事件に巻き込まれ亡くなった幼なじみのユキを、AI・スノウとして蘇(よみがえ)らせていた。自らに迫る危機を察知したスノウは、真木と平がいない間に、サチ(山田奈)を取り込み暴走を始める。はたして、真木、ウーアの行方は…。

白井の日記

平(星野源)は、鷲田総理の第二秘書だった鷲田光(岡部たかし)を訪ねて、7年前の不正献金事件の鍵を握る日記(鷲田総理の第一秘書・白井の日記)を手に入れる。そこには、鷲田(柄本明)政権を揺るがす重大な秘密が書かれていた。

亡き白井の日記を携え、総理官邸を訪ねる平。だが、平は「安心してください。私が 責任を持って廃棄いたします。夢をかなえていただければ。」と鷲田総理を揺さぶる。夢とは総理のイスのことで…。

 スノウの暴走
真木(神尾楓珠)は、事件に巻き込まれ亡くなった幼なじみのユキを、AI・スノウとして蘇(よみがえ)らせていた。自らに迫る危機を察知したスノウは、真木と平が東京へ行っていない間に、サチ(山田杏奈)に連絡して会う。

スノウは「私とあなたは似ている。私とあなたは世界から はじき出されている。」と語りかけ、サチを取り込む。

スノウ:「私はスノウの中でしか成長できない。私は大人たちに殺された。命を大切に。人を傷つけちゃ駄目。そう言ってた大人たちに…。大人は醜い。うそつき。汚い。だから作らなきゃ。大人がいない世界を。助けて!早くしないと、私はまた殺される!」
サチはスノウを助けたくて、スノウのデータを善意ポイントのシステムを通してソロンにつないだ。
スノウはウーアの住民に大人がいない世界の映像をみせて語りかける。「ユートピア、理想の国。 大人がいない世界。ウーアは私たちの楽園になる。」

攻撃されていたソロンだが、自己修復システムを作動。メンテナンス作業のためサービスが停止された。

 ソロンの弾劾
真木や平がウーアへ戻って事態を把握した。サチは自分の責任だと謝る。
平は「表向きは どう説明しますか?」と真木に聞くと…
真木は「表も裏もありません。僕の責任だということを正直に話します。真実が埋もれるのを…多分 ユキも望みません。」と答えた。

真木はライブ配信で昨日のAIスノウの暴走を謝罪会見。(総理の秘書の一家心中の件は伏せて)昨日のAIは唯一真木に優しくしてくれた女の子のデータで作ったこと。大人たちの事件に巻き込まれて10才で亡くなった女の子が怒り・悲しみのため暴走したと明かした。

ネットでは「私的流用?」「気持ち悪い!」「支持率おとせ」とざわついた。

残念だけど現実にいますよねー、流されやすい人!
これも現実。つまり現実はこのように出来上がる。ってことですね!

・・・支持率が29%になり、ソロンは真木総理を罷免した。

サチは責任をいっそう感じた。そんなサチに、すぐり(河合優実)は「私、17才のとき学校を燃やしたかった。自分の怒りで窒息しそうだった。あんたもそんな自分をずっと抱えて生きてくんだよ。」と声をかける。

鷲田総理が辞任
テレビのニュースで「白井柊吾氏の日記を報栄新聞の記者が入手しました。」と報じた。(平が渡したのだろう)

鷲田総理大臣が辞任する意向を固める。記者の質問に「記憶にございません」とごまかす鷲田。

山口早希(松本まりか)は「よかたの?もっとスマートにやる方法はいくらでもあったでしょう」と平に尋ねる。

平は「考えたよ 最初は。でも 気が変わった。… 真実を埋もれさせたくない。」と答える。

真木のラストメッセージ
サチは、できる範囲でウーアの仕事を手伝うことになった。真木に改めて謝罪した。だが、真木は実はホッとしているところもあった。そして「ありがとう」とサチにこれまでのことを感謝した。

最後の演説に向かう真木の靴を平が磨いた。そして平は言った。

平:「実は応募したんです。けど僕はソロンには選ばれなかった。君にはあって 僕が失ったもの。君の言うとおり、経験は時に人を臆病にさせ、腐らせる。何かを得る代わりに大切なものも失っていく。それでも まだ青い夢を追いかけることはできる。色々なところへ歩いていってください。君は これからもウーアの初代総理です。」

真木の演説

ここで生きたいと思える社会を創りたい。
その思いを。
子供っぽくて甘くて青い理想を。
それは…
ウーアでだったら実現できるかもしれません。

3年後。平は日本の総理大臣になっていた。

青波ランタン祭りの日。真木は留学していて朝の5時だが、サチの連絡で参加。メタバース(インターネット上の仮想空間のこと)で遠くにいても参加できるのだ。

【17才の帝国】最終回ネタバレと感想!平(星野源)の決断に希望が!|【dorama9】

17歳の真木総理はピュアで誠実、その上愛があります。

殆どの大人は、嘘と利己の塊ですが、世間では真木総理のように生きる人を「青い」と称します。
「青い」は青二才が語源でしょうか。経験不足によって考えが浅く現実味がない例えです。

ドラマの中で「経験は時に人を臆病にさせ、腐らせる」というセリフがありました。
大人の経験とは、利益の取り合いのための保険スキル蓄積なのではないでしょうか。

そうである以上そこからは愛が生まれるわけもなく、嘘と欺瞞に満ちた社会は変わりようがありません。それでも大部分はそういう社会に疑問も持たず、それが普通の状況と認識しています。

根回しも忖度もない、表向きも裏向きもない、理想と現実の乖離もない、建て前と本音の使い分けもない、そんな生き方を眩しいと思う反面、それでは社会で生きられないと信じている。そしてそれらのスキルを磨き続けることにエネルギーを使い果たす。
そんな日本人の幸福度が低いのは納得できます。

「青い」を摘む行為を続けてきたばかり、かくして日本は腐り始めたということでしょうか。

複雑に絡み合う権益システムから、シンプルに「幸福」に的を絞った方法はAIにとっては得意分野です。

できれば早くAIのアシストするユートピアの実現が叶うことを願って止みません。
そうなれば子供たちものびのびと遊び、そこから能力を発見したり、伸ばしたり個性豊かに成長してゆくことでしょう。

少なくともこれ以上「青い」を摘む行為だけはするべきでないとつくづく感じました。

 

 

 

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