2020年11月

『快三昧に生きる』 【26】

2020.11.30

“愛” は同期現象か ⁇

いよいよ終盤に入りました。

同期についていろいろな視点で観てきました。
そして、そういった同期現象を私たちは日常的に経験していることを、思い出されたでしょうか?

音楽や劇場公演の観客が、またSNSや#(ハッシュタグhashtag)デモで集まる人たちも同じように、集団同調行為に至ります。同じように湧いて、同じような行動をする、同期現象の一つです。

集団だけではなく、個人同士においても、同期現象はあります。
11月18日NEUノイsolutionの記事に上げました、韓国のドキュメンタリー『兄と奏でるノクターン』では、生まれたときから兄に母親を取られ、母の愛に飢え、兄を憾み、妬み、それ故に自分の道さえ見つけられない、という不幸な思春期を過ごしてきた弟が、愛に目覚める、感動的なお話をお届けしています。

彼(弟)が苦難する様子が丁寧に描かれていて、“こういうことはどの家庭にも起こりそうなことだな~”と感じながら、番組の意図する弟の変化を楽しみに見入っていました。
それが、なんと「音楽」という媒介の助けによって弟は変化を遂げたのです。

母親の言葉は一切役に立たなかった彼に対し、大きな衝撃波になったのが「音楽」という波動だったのです。音楽と言う波に乗って同期現象が起きた、ということです。
彼の兄に対す「愛」が芽生えた瞬間でした。とても美しい姿に見えました。
特に、クラシックの音が醸し出すリズム、メロディーには「揺らぎ」があります。これは複雑系によって生み出された「愛」という創発に他なりません。

兄への信頼と共調を感じた弟の情動が伝わって、こちらまで同期してしまい幸せな想いを感じさせてくれました。音楽のみによらず、芸術、映像、ドラマ、小説、詩もきっとそのような効果があるのではないかと感じました。
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『快三昧に生きる』 【25】

 

2020.11.23

「創発」という摩訶不思議な現象が「カオスの縁」によって生まれることがわかりました。
原子が分子をつくり、分子がたんぱく質をつくり、細胞が内蔵をつくり、内蔵が一人の人間をつくり、人間が社会をつくり、国を作る。
最初の原子は、人間社会そして国をつくってしまったどころか、森羅万象をつくってしまったのです。それは決して部品一つ一つを積み上げたものではなく、時に応じて要素が要素以上のものを生み出した結果でした。1+1=2<の繰り返しだったのです。複数の要素が互いに影響し合い全体の性質を作り上げたのです。(=複雑系)

複雑系が研究される分野は多岐に渡り、生物学、経済学、自然、気象現象、コンピューターサイエンス、ニューラルネットワークなどに及びます。

ところで、「カオス」の性質には、初期値をちょっと変えただけで、全く異なる結果を生み出す「初期値鋭敏性」(=カオス理論)というものがあります。

ブラジルで一匹の蝶が羽ばたいたせいでテキサスで嵐が起きる、という「バタフライ効果」を聞いたことがあるでしょうか。
日本流に言うと、「風が吹けば桶屋が儲かる」という諺です。
1、風が吹くと、土埃が目に入り失明するものが増える
2、失明したものは三味線引きをするために三味線を買うものが増える
3、三味線が売れると三味線の皮に使う猫が減る
4、猫が減るとネズミが増える
5、ネズミが増えると、桶をかじられ、桶の消費が増える
6、桶屋が儲かる

これは江戸時代に言い伝えられたことのようで、日本では少し異なる意味合いで使われていますが、因果関係が全くないことが時間経過で起きる、ということです。

バタフライ効果は、更に複雑な要素の相互関係で、「ほんの些細なことが、徐々にとんでもなく大きな事象を起こす引き金になる。」ことを言い表し、アメリカの気象学者エドワード・ローレンツが提唱したものです。

微小な初期条件の違いによって結果に大きな違いを生み出す現象や、予測不能な複雑な現象を扱う「カオス理論」を象徴的に表現したものとして知られています。
土星の輪における重力相互作用や、二重振り子の揺れ、地球の地磁気の動きなどがその例です。 >> 続きを読む

兄と奏でるノクターン

 

NHK ドキュランド 「兄と奏でるノクターン」(2020年11月13日放送)を見て


 知的障害を持ちながら、音楽の才能を開花させていく兄ウン・ソンホ(32歳)と、弟ウン・ギョンギの密着ヒューマンドキュメント。

兄ソンホは身の回りのことはほとんど自分ではできない。そんな兄にかかりっきりになる母への疎外感を持ち、同じように音楽の才能を持つ弟のウン・ギョンギは、同じくピアノを弾けるが音大を受験するも落ちてしまい、母親と兄への苛立ちが大きくなっていく。

 

兄ソンホはピアノ、クラリネット、バイオリンを弾きこなすけれど、顔を洗うこともおぼつかず、髭を剃るのも母の仕事だった。

 

 

障害児の可能性を伸ばすために奔走する母親の愛情差別に嫉妬し、弟ギョンギは職を転々とする不安定な生活を送り、母親の言いなりに生きていけば良い兄に冷たい態度を変えようとしない。兄を馬鹿にし、母には暴言を吐く日常に、本人自身もウンザリしていた。

ギョンギは「僕が障害者だったら今より幸せに生きられる」と言う。そして、障害者の兄ソンホと同じくらい時間とお金を母が自分にかけていたら、今頃僕は成功していたと語る。

 

 

そんな中、ギョンギは母の代わりに兄のロシア演奏旅行に同行することになる。演奏以外には何一つできない兄ソンホの面倒を見るギョンギ。兄のソンホは至れり尽くせりの母がいない海外演奏旅行に不安を隠せない。そんな二人をカメラは丁寧に追う。

そして迎えた本番当日、緊張しながらも弟ギョンギは、兄の髭剃りやタキシードの着付けの世話を、かいがいしくする。今日はのソンホはクラリネット演奏。そしてピアノ演奏をギョンギが担う。

息の合った二人の演奏。ギョンギは初めて曲に乗せて兄と語らうことができたと感じていました。心を通わせる二人。兄が「大丈夫だ、俺についてこい!」と言っているように聞こえたのです。初めて兄が兄らしく見えた瞬間でした。

会場は湧き、アンコール! 曲は何と「風笛」でした。
そして兄と弟はこれを機会に、二人が助け合って、互いの幸せを成就してゆくことでしょう。思わず涙しました。機会があれば是非見て欲しいドキュメンタリーでした。

 このドキュメンタリーで「言葉は不完全」ということを再認識しました。。そしてそれを補う人間の関係性には「嘘のない媒介」が必要なのでは?と。音楽がその役割を果たしたドキュメンタリーでした。

 

 

 

 

『快三昧に生きる』 【24】

 

2020.11.16

軌道修正についてお話しているタイミングに、アメリカの大統領選での、バイデン氏の勝者宣言がありました。
トランプ大統領による「アメリカファースト」に代表する、利己的政策は就任以来世界のブーイングを浴びながら終焉を迎えようとしています。

ジョー・バイデン氏は、これまでの自分勝手な幼稚ともいえるトランプ政策のすべてに軌道修正を加えようとしています。
ヨーロッパをはじめとする、世界の各国ではバイデン氏への歓迎ムードが感じられます。

何とかトランプ以前のアメリカを取り戻せそうな雰囲気です。
それに伴い世界の情勢も舵を切り直す気配が見えます。

ドナルド・トランプは米国を世界の指針たらしめている価値観を冒涜した。ジョー・バイデンは修復と再生の見通しを与えてくれる。
ジョー・バイデン氏は、米国の病をたちまち治してくれる魔法の薬ではない。しかし善良な人物であり、ホワイトハウスに堅実さと礼節を取り戻してくれるだろう。
分断された国家を再度一つにまとめるという、長い時間を要する困難な仕事に取り組む能力もある。
トランプ氏は米国の価値観、米国の良心、そして世界における米国の発言力という3点の守護者としては、求められる基準を著しく下回る働きしかしていない。

Jbpress

やはり、アメリカは世界のリーダー国としての意識を失っていなかったと言えます。
世界の国々にも利己的で「人類の未来」を見据えないトランプシンドロームは伝染を仕掛け、英国のEU離脱による弊害が今頃噴出しはじめています。
トランプはそういう意味でも、人間の成長を阻み、後退を促したと言えそうです。

「話しても分かり合えない」の実例として、従来的民主党対共和党の枠組みをはるかに超えた、トランプ派とバイデン派という、人間的枠組みに因を発する、アメリカという国に潜在的に潜んでいた問題の検出として、分かりやすい例を示してくれた「アメリカの分断」という大きな課題を生んだ今回の選挙でした。
バイデン氏は、どのような解決策を呈するか今後の動向が見逃せません。 >> 続きを読む

『快三昧に生きる』 【23】

2020.11.9.

集中力も、後悔も、カチン、プチン、も無意識に支配されていることを述べてきました。
そしてその無意識が顕すそれらの自分こそ、その時点での等身大の自分の姿であることを知ることができました。

これは上辺をどう繕っても誤魔化せない自分の本性なのです。
しかし、それが解ってそのまま受け入れ続けるのは、それこそ怠惰と言えるでしょう。
自分の弱みが,構造的な偏向(ミス)に依るものなら、それを修正すればいいだけです。

無意識の軌道修正はそこから始まります。
⇒(物事の進むべき方向のずれを正すこと、誤った方向進みつつある状態を本来目指すべき方向へ進むように修正することなどを意味する)。

無意識の軌道修正によって得られるメリットは、自己の望む未来を創るための土台作りですから、望む性格、望む人格、望む習慣、望む幸せ、望む能力へ登るための階段が出来上がるようなものです。その階段を登る毎に望む自分の全体像へ近づいて行く魔法のような階段の内なる創発、つまり1+1以上のイノベーションを生み出す力を促すことなのです。

創発(そうはつ、英語:emergence)とは、部分の性質の単純な総和にとどまらない性質が、全体として現れることである。局所的な複数の相互作用が複雑に組織化することで、個別の要素の振る舞いからは予測できないようなシステムが構成される

ウィキペヂアより

この創発と言う言葉はとても重要な概念です。
世間では組織内の相互作用に用いることが多いようですが、実は私たちの脳内においても誘発される現象です。
創発現象は非線形力学、複雑系、カオスの縁など多岐に渡る知識を要します。
私ごときの器量では、充分にお伝えできるかどうかわかりませんが「快三昧に生きる」【24】にてあらためて、私なりにできる限り解りやすくまとめてみたいと思います。

このように、科学界ですら、ニュートン力学からカオス理論、線形から非線形という全く異なる視点へと進んでいます。
古典物力学に親しんできた人たちは量子力学を理解するのに困難を極めます。

そうした中で、お互いの脳的環境をすり合わせる方法があるか?という疑問が発生します。

脳内環境とは、ここでは無意識で構成された「信念」を中心とした思考体系を意味します。
「自分の主張は正しい」と感じている源です。
何度もお伝えしているように"信念"の中身を紐解いてみると、その人特有の「生まれ」「育ち」「経験」「環境」「属性」などによって形成された"判断の枠組(パラダイム)"に基づいた"好き嫌いの感情"に過ぎないことを述べてきました。

そういった信念に基づいて仕上がった「主張(主観)」は誰にでもあり、それらの共通性には、世代が大きく関わっているということも解りました。
それを踏まえて他者との「相容れないパラダイム観」とどう向き合うか?ということです。 >> 続きを読む

『快三昧に生きる』 【22】

 

2020.11.2.

単一思考と‟コミュ力

性格が弱すぎる、声が小さい、雑談が小さい、怒らない。
こういった北村匠海の性格が、山本舞香は“普通じゃない“おかしい”と訴えるわけです。
「大きな声で元気よく‼」が、「当たり前でしょ!」という思い込みがあることが観えてきませんか。
山本舞香は相当イラついているようで、「今日も元気そうだね」という北村にカチン!。 「お前のテンション上げるために元気そうにしてんだよ!」と。
また「プチンと行きそうなのに怒らない」という山本舞香に、生物学者池田氏から「自分が間違っているかもしれないじゃない?」と指摘され、「何言ってんの?」と理解不能な顔を。
コミニケーションに努力しているつもりの山本舞香、その自分の努力が届かない状況に相当ストレスを感じ、何とか他者に訴え、自分の正当性を証明したい。ステレオタイプの陥りやすい「罠」にはまって、気づかないために、逆に山本舞香への指摘が多いことに唖然としているのでした。
これは全て無意識に刻まれた行動基盤が起こすものです。

誰とでも仲良くする能力、誰にでも自分を受け入れられ、好かれる能力を、コミュ力として、大切な基本的社会適応力であると教えられ、空気読む、忖度、足並み横並びを強制されてきたように思います。
その代表が「大きな声で元気よく」につながっていたことを再発見しました。
昭和世代の教育による「単一思考」への偏向の名残が、まだまだこのような形で見られるのですが、これは現代の人間関係の典型的な形であるように思っています。
こうした価値観のズレを、気づいている人と気づいていない人の間では、どうやってもその溝を埋めることはできないでしょう。

「自分が正しい」を押し付けたくなったり、第三者に共感を求めたくなったりする場合、「単一思考」に陥っていることを認識した方が、「カチン!」や「プチン!」が減少され、今よりも楽しい日常になることと思います。
そんな人と出逢った時には、北村匠海の「やんわりスルー」の対応は最良ではないかと思います。 >> 続きを読む