2017年7月

意識のちから

「フィルター」が創る世界(2-2)

脳は自ら再配線する―その2

「社会通念」に侵されたフィルター
 私たちは歳をとればとるほど、社会通念が「フィルター」を固定します。社会通念上では、未だ脳は老化の一途をたどると考えられています。年齢を重ねると脳細胞は絶えず死滅し再生しない、と。そんな固定された社会通念を重視する私たちの「フィルター」から構築し直さなければなりません。脳に関することだけではなく、ほとんどの社会通念というものは、古いまま固定されていることが多く、私たちの潜在意識の中で不安を煽って操っていることを認識すべきではないかと思います。
 実は、高齢になればなるほど若々しくありたいという気持ちが高まり、脳は明らかにそれと歩調を合わせている、とチョプラ博士は語っています。実際自分が高齢になってみてそれを実感しています。

 『SUPER BRAIN』(ディーパック・チョプラ著)より
 同じ遺伝子を持って生まれた一卵性双生児でさえ、70歳になると遺伝子の活性パターンは大きく異なり、それぞれが選んだ生活スタイルの結果が身体にも劇的な違いとして顕れる。その違いは、二人の生まれ持った遺伝子に足し引きされたのではない。そうではなく、生活のほぼすべての側面(食事、活動、ストレス、人間関係、仕事、物理的環境)が、二人の遺伝子の活性を変化させたのだ。そういう意味では、老化のどの側面をとっても回避は可能だ。身体的機能だろうと精神的機能だろうと、年齢を重ねるほどに機能を向上させている人々がどこかにいるのだから。株式仲買人の中にも、都市を追うごとに記憶力を高めながら複雑な取引を行っている90代の現役が何人もいる。
 問題はこれまでの社会通念に固執する人があまりにも多いことだ。
高齢になるにつれて無精になり、学ぶことに無関心になる傾向が私たちにはある。わずかなストレスで苛立ちやすくなり、そのストレスが長く後を引くようになる。かつては「年寄りの我儘」として片付けられてきたが、今ではその原因を「心と脳のつながり」にまでたどることができる。中略

 心と脳のつながりにおける主導権は、心に握られている時間の方が長い。高齢になるにつれ、私たちの精神活動は単純化される傾向にあり、防御メカニズムや安心感を与えてくれるものに向けられることが多い。知っているものに安心感を覚え、何か新しいことを学習するのを全力で避けようとする。こうした年配者の行動は短期や頑固として若い人を悩ますが、その本当の原因をたどっていくと、心と脳の主導権争いに行きあたる。 >> 続きを読む

意識のちから

「フィルター」が創る世界(2-1)

脳は自ら再配線する―その1

 先回までで、「脳は意識で操られる」ゆえに「感情は自己責任‼」ということを認識できました。

では、どのように操られているのか?

『SUPER BRAIN』(ディーパック・チョプラ著)より

 ジャン=ジャック・ルソーは1700年代半ばに、自然はよどむことがなく、機械のようなものでなく、生き生きとした動的存在である、と論じた。さらには、脳は経験に応じて絶えず再構築される、と提唱していた。その趣旨と目的に応じて変化するための適応能力が備わっているとする彼の主張は、脳の柔軟性と可塑性(環境に応じて柔軟に変化する)を認めた最初の宣言だったのかもしれない。

 20世紀の半ば、米国人心理学者カール・s・ラシュレーによって、その証拠が示された。ラシュレーは、ラットを訓練した後、そのラットの大脳皮質を少しずつ除去していく実験を行った。大脳皮質の90%を除去してもラットは以前の学習を記憶しており、迷路内の餌を探し出すことに成功したのだ。ラットは五感に基づいて多種多様なシナプスをたくさんに生み出していたのだ、つまりラットは迷路内の餌に至る道筋をただ「見て」知っていたわけではなく、臭覚、触覚も働かせていたのだ。大脳皮質が少しずつ除去されたとき、脳は新たな突起(軸索)を発芽させ、別の感覚を生かすために新しいシナプスを形成し、ごくわずかでも残された手がかりがあれば利用したと考えられる。 >> 続きを読む

意識のちから

「フィルター」が創る世界(1-2)

脳に操られているのか、脳を操っているのか?―その2

 人間の身体は数兆億個の小さな回路からなる一つの巨大な自己制御回路と言えます。すべての細胞が互いに語り掛け、その答えに耳を傾けている,まさに自己制御(フィードバック)の本質です。フィードバックという言葉は、もともと電子工学の用語で、サーモスタットの温度を感じて自動的にON・OFのスイッチが切り替わるシステムです。人の身体も同じで、体温が上がると、上がり過ぎないように汗をかいて、蒸発するとき熱を奪って体温を下げてくれるからです。(賢いね)
 また、恐怖を感じるとゾッとします。これも速まった心臓の鼓動を調節するための制御回路が働いた結果です。更に薬の常用により、自身が産出する同様の天然物質の生成を抑制されたため、臓器は収縮してしまう。そのため突然薬を止めると心臓の鼓動を抑えられなくなって、心臓は制御不能なまま走り続けることになる。ということもあるそうです。結果は心臓発作!(怖いね)これもフィードバックの結果です。

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意識のちから

「フィルター」が創る世界 (1-1)

脳に操られているのか、脳を操っているのか?― その1

 私たちが見て、聞いて、触って、味わって、嗅いだものは、すべて脳がなければ象、音、感触、味、臭として感じられないばかりか、それらに快、不快の感覚を生み出す のも、脳によって成されています。

 例えばあなたが決まりきった日常を好み、変化を好まないという「フィルター」を持った場合、好奇心の誘惑を危険視するでしょう。そして、可も不可もない日常を送り、それに優るものはないと信じることでしょう。退屈を感じても、安全が第一の主義こそ平和で幸福なのだ、と。逆に同じことの繰り返しを好まず、常に新しいものに挑戦したり、新しい情報を取り込んだりと、日々刻々と脳内を構築し直している好奇心満々の「フィルター」を持った人と対比して見てください。

「脳は一生進化し続ける」とは言え、どちらの脳が進化しやすいでしょうか? 

 先回までの脳の具体的な働き及び領域を観て、その部分を刺激することで、無限の可能性が生まれる。ということを学びました。ただ、これらの実験は、まったく好奇心のない、ルーティン生活者の場合では効果は激減する気がしてなりません。なぜか?
 脳の進化とは神経細胞のネットワークの構造が構築し直されることで、「フィルター」は潜在意識に蓄えられた私やあなたのあらゆる体験・価値観、倫理観、信念、快、不快の好みからなる固定観念が自動的に働く癖の元となっているものです。私やあなたの日々はこの癖の支配下で物事を判断したり、決断したり、無意識に行動したりしていることが判明したからなのです。

ティーパック・チョプラ
「知識(新たなネットワーク)は事実に根差すものではなく、好奇心に根差すも」です。安全だけに捕らわれた固定化したネットワークからは、日々変化し、構造を変えるネットワークは創造できません。脳内ネットワークとは、神経細胞が新たな軸索や樹状突起を形成しながら糸状に伸びることです。一つの細胞(ニューロン)が他の細胞(シナプス)に繋がる活動の連続は現在では人生終盤まで続き、新たな軸索と樹状突起が形成されることが知られています。老化を予防し、あらゆる現実に適応できる可能性を与えてくれているのです。 >> 続きを読む

意識のちから

「感情」は自己責任‼ 4-7

              全ての人に天才的能力を
 4-7
・才能(集中力)UP

 ある科学者は潜在意識の力によって、人類の能力は飛躍的に高められると考えています。潜在意識は原始的な思考や感情の単なる貯蔵庫ではありません。日常生活や生存に欠かせない役割を果たしています。潜在意識を活用すれば、天才的能力を一時的に発揮できることはわかりました。では、その効果を永続させ、脳をよりパワフルにすることはできるのでしょうか?


マイケル・ワイゼンド(ニューメキシコ州・マインドリサーチネットワーク 神経科学者)
 
彼はアメリカの空軍にも協力しています。役目は人間の脳の機能を向上させることです。無人航空機やドローンから送られてくる映像を分析のは軍の技術者の仕事です。しかしそれはギリギリの決断を迫られる仕事です。判断を誤れば弾薬を載せた敵のトラックではなく、支援物資を運ぶ同盟国の車両を攻撃しかねないからです。
 「ドローンから送られてきたでーたを解析するのは、あくまでも人間です。専門アナリストが大勢もとめられています。そのため軍は環境から得た情報を記憶し、処理する能力を強化したいと思っているんです。そこで、ワイゼンは、神経科学を応用しました。 >> 続きを読む

意識のちから

「感情」は自己責任‼ 4-6

 

 潜在意識の「癒し効果」を分析し、脳や遺伝子の活動を医学的成果に結びつけた例を見てきました。このことは私たちのこれまでの常識を大きく塗り替えるものと言えます。こうして科学が宗教の得意分野まで解明してくれたことで、私たちは神秘に包まれていた超越的存在のベールを一つ一つはがしてゆくことができます。超能力者と思われていた宗祖たちも、おそらく瞑想の実践によって開発され、その能力開発の可能性を我々凡人に伝えようとしていたのだろうと考えられます。
 つまり、脳を鍛えることによって人間の可能性が高まり、より進化を遂げる大きな要因ではないか、ということを示唆しています。それはある宗教に限定されたり、特別に選ばれた人ではなく、万人に等しく可能性が秘められていることを意味しているのです。

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『ヒマラヤ聖者の生活探求』はベアード・T・スポールディング(地球物理学者)によって書かれた報告書です。1884年、極東を訪れた11人の調査団の一人として、3年半にわたりヒマラヤの大師がたの生活を目の当りにして、実際に見聞きしたことを述べている本です。昭和44年9月25日が初版、『霞ヶ関書房』刊です。原著は、1937年のようです。

その内容は、人間が本来的には無限の能力を秘めているということを全5巻によって語られています。 >> 続きを読む

意識のちから

「感情」は自己責任‼ 4-4・4-5

4-4
・潜在意識のネイティブ言語
 ボディーランゲージ、それは潜在意識のネイティブ言語です。身振りや声の調子で私たちは絶えずそれとなく意思表示をしています。それが周りに大きな影響を与える場合もあります。この言語を解読することで新しいコミュニケーションを確立することができるとしたら?
 人間は常に意思を伝えあっています。実際のおしゃべりはもちろん、最近では
SNSやメールでもやり取りが盛んです。
                  情報工学者 アレックス・ペントランド(マサチューセッツ工科大学)は、こうした従来のコミュニケーションを超え、新たな視点に立って人間同士をつなごうとしています。彼にとって重要なのは言葉ではありません。もっと原始的なコミュニケーション手段、彼はそれを‟正直シグナル“と呼んでいます。
「類人猿は高度な言語をもっていませんが、意思を通わせ決定を下しています。同じように人間も身振りや合図によって非言語的なコミュニケーションを交わし、社会的な意識を伝えています。これが‟正直シグナル“の一例です。意識的ではなくても人間同士の付き合いには大きな影響を与えています」 >> 続きを読む