国境を開くことで富は増大する

『隷属なき道』(続)

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 9章 国境を開くことで富は増大する

・西側世界は発展途上国を支援するために、年に1348億ドル、月に112億ドル、1秒に4274ドルを費やしている。過去50年間に投じた総額はほぼ5兆ドル。

・その支援は役に立ってきたのか?その効果の実際のところはわからない。MITの教授エスター・デュフロは貧困行動研究所を設立。世界56か国で500件以上の比較試験(RCT)を進め、開発支援の世界を根底から覆いつつある。

・RCTのおかげで直感に反する結果が判明している。100ドル相当の無料給食が、学校に通う年月を2.8年伸ばすことが分かった。無料の制服の効果より3倍長い期間だ。寄生虫に苦しめられている子供の場合、わずか10ドルほどの薬というきわめて小さな投資によって、就学年数を2.9年伸ばすことができた。

・しかし、どれほど結果を出せたとしても、開発支援は常に、バケツに一滴の水を垂らすだけのものだ。どのようにして民主主義を構築するか、あるいは国が栄えるには何が必要かといった大きな問には、RCTは答えられない。

・世界の貧困を一掃する最良の方法は「開かれた国境」である。これが実現すれば「世界総生産」における予想成長率は、世界的な労働市場の動きのレベル応じて、67%から147%に及ぶと、異なる四つの研究が示している。そして労働の国境を開けば65兆ドルの富が生み出される。

・国境は差別をもたらす唯一最大の原因である。2009年、信用危機が勢いを増していた時にゴールドマン・サックスが従業員に支払ったボーナスは、世界で最も貧しい2億2400万人の収入の合計に等しかった。そして、地球で最も豊かなわずか62人が35億人の総資産より多い富を所有しているのだ。

・21世紀の真のエリートは望ましい国に生まれた人だ。豊饒の地の貧困線は、外の荒野での貧困線の17倍も高い位置にある。米国のフードスタンプ受給者の暮らしぶりさえ、世界で最も貧しい人々に比べると王族のように見える。

・移民にまつわる数々の誤謬がある。例えば移民はテロリストという嘘だ。米国で1975年から2015年までの41年間で、9・11を別にすると外国生まれのテロリストに殺されたのはわずか41人。平均すると1年に1人だった。

 ― ジョン・メイナード・ケインズ(1883~1946) ―
 難しいのは新しい考えになじむことではなく、古い考えから抜け出すことだ。

『隷属なき道』p236~238より引用

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