『隷属なき道』ルトガー・ブレグマン を読んで・・・・ 

 読み終わり、感動がまだ残っています。“やっと登場してくれた”という想いで目が潤むほど嬉しく、こんな若者の登場を待ち望んでいたので、有難いという想いでいっぱいです。(年寄りは涙もろいので大げさですみません・・・)

ブレグマンを知ったのはNHK新世代が解く!ニッポンのジレンマ「経済のジレンマ大研究@阪大」でのインタビュー映像でした。彼の言葉は一瞬で私を捉え離さなかった。彼の言葉のすべてをテープupGDPの罠」と題してHPに紹介しました。 

 まずは、以下に著書の最期ページに紹介された解説を紹介します。 

解説 欧州の新しい知性の登場 

2014年にオランダで自費出版同然の本がコツコツと売れ、アマゾンの自費出版サービスを通じて英語に訳された途端、大手リテラリー・エージェアントのJanklow&Nesbitの目に留まり、2017年には全世界20か国での出版が決まる。2015年、フランスのトマ・ピケティの登場を彷彿とさせるようなシンデレラストーリーを体現しているのが本著『隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日3時間労働』である。

筆者は、まだ29歳の若さで、ハイエクからマルクスまでを縦横無尽に読み解き、説得力のあるデータを提示しながら、まず今日の世界の状況をこんな風に絵解きして見せる。 

産業革命以来、人類の労働時間はずっと減り続けていた。ケインズは第1次世界大戦のあと、スペインで講演を行い、その中で、「2030年までに週の労働時間は15時間にまでなる」と予測した。ところが今日の我々はそんな状況ではまったくない。確かに1970年代までの労働時間は減り続けていた。しかし、80年代以降減少が止まり、逆に上昇に転じた国もある。労働生産性を見てみよう。これは、80年代以降順調に上がっている。しかし、逆に労働者の実質賃金は下がり、貧富の差は国内で見ても、また世界的に見てもこれ以上ないくらいに拡大している。何しろ、居間世界では上位62人の富豪は快35億人の総資産よりも多い富を所有している。

そうした世界を救う方法として著者が提案しているのがベーシックインカムと一日3時間労働そして国境線の解放だ。中でもベーシックインカムをめぐる著者の議論には、目から鱗が何枚も落ちる人が多いのではないだろうか。日本のケースに充てはめてみれば、生活保護、奨学金などの学費援助制度、母子家庭保護のための福祉プログラム等々をすべて廃止する。その代りにすべての個人に年間150万円なりのお金を直接支給するのである。
2009年のイギリスでの実験例が第2章で紹介されている。3000ポンド(約45万円)のお金を与えられた13人のホームレスは、酒やギャンブルに使ってしまうだろうかという予想に反し、電話、補聴器などまず自分にとって本当に必要なものを買い求めた。20年間ヘロインを常用していたサイモンの場合、身ぎれいにしてガーデニング教室に通いだした。そして実験開始から一年半後には、13人の路上生活者のうち7人が屋根のある生活をするようになった、というのである。つまり、貧困者は第1にまとまったお金がないことで、貧困から抜け出せないのだ。教育制度や奨学金にいくらお金を使っても、そもそも貧困家庭の子供たちはそうした制度を利用するということを思いつかない、だからまず、すべての国民に、施しではなく権利として必要最低限の生活を保障するお金を渡すという考え方だ。
開発途上国援助も、NPOや現地政府にお金を渡し、援助プログラムを支援するよりも、直接人々にお金を渡す方が、はるかに効果がある。と説く。また、中間の官僚やNPOなどの人件費などにかかるお金を考えれば実は費用対効果でも実効性のある方法だということが、各地の実験のデータをもとに綴られるのだ。
確かにこのベーシックインカム制度が導入されれば、日本の生活保護制度をめぐる様々な問題は一挙に解決するだろう。日本の生活保護の場合、常に左派と右派の論戦の焦点になるのは不正受給の問題だが、これは、行政側が審査をして認定するという作業があるために生じる問題だ。小田原市の職員が「保護なめんな!」とプリントされたジャンパーを揃いで作って、生活保護家庭を訪問していたような問題もなくなる。そもそも職員がこうしたジャンパー作ってしまうのは、国、自治体の「生活保護の適正化」という支給総額枠の圧力があるからだ。

ルトガー・ブレグマンという知性は、オランダという国の背景を抜きにして考えることはできない。オランダは労働とインターネットの分野でフロンティアを切り開いてきた。労働の分野では、1982年のワッセナー合意から始まる労働環境の先進化が有名だ。失業対策としてのワークシェアリングから始まったこの改革は、1996年には正規雇用者と非正規雇用者の賃金について同一労働同一賃金を定めた。その結果失業率は1983年の14%から、2001年の2.4%まで縮小した。労働分配率が効率的になった結果、企業収益も改善、国際競争力もつき、投資が促進された。このオランダモデルの成功は本書でブレグマンが説く、一日3時間労働で残りの時間を人生にとって本当に有意義なものに使うという主張の背景になっているだろう。

オランダは世界でもインターネット普及がいち早く進んだ国の一つ。ブレグマンの所属する「デ・コレスポンデント」というプラットフォームは、そのオランダならではのモデルだ。2013年に数人のジャーナリストたちがわずか8日間で100万ユーロ(約13000万円)をクラウドファンディングで集めて始められたものだ。そのスタンスは同ウェブサイトによれば以下の通り。 

1.広告収入は一切頼らない
2.従来の客観報道は止める。書き手の怒り、疑問、喜びが直に出た記事を出す。
3.日々のニュースを追うのではなく深い背景を抉るストーリーを追う。 

ブレグマンは、オランダのユトレヒト大学(2014年の学術ランキング、欧州第10位)で歴史学を学んだが「デ・コレスポンデント」に参加してからは、そうした読書歴を背景に、自由取材をし、本書で綴るような現代社会の様々な矛盾を解決する方策の提案記事を書いてきた。それが話題となり、「デ・コレスポンデント」発の書籍として出版したのが2014年のオランダ語版、そしてアマゾンのプリントオンデマンドを利用して出版したのが2016年の英語版だった。

ちなみに最初のオランダ語版のタイトルは『ただでお金を配りましょう』。英語版プリントオンデマンドでタイトルは『現実主義者のための理想郷』と変わった。

日本語版は、ブレグマン本人と相談をした結果、ハイエクの『隷属への道』を本歌取りした『隷属泣く道』となった。本書の第10章で、ブレグマンは、社会主義とケインジアン全盛の時代に、自由市場が解決するという新自由主義のアイデアの力を信じたフリードリヒ・ハイエクを高く評価しているが、2017年の『隷属なき道』は機会(=AI)に隷属するのではなく、本当の意味のある人生を人々が生きるという意味を込めている。

ブレグマンは本書の出版を記念してオランダ大使館の招きで2017514かから20日まで日本に滞在、慶応義塾大学での講義のほか、様々なメディアのインタビューをこなした。
「週15時間労働、ベーシックインカム、そして国境のない世界」。いずれも、夢物語としか、聞こえないという批判と虫の沈黙の中で、ブレグマンは言う。奴隷制度の廃止、女性参政権、同性婚・・・いずれも当時主張する人人々は狂人と見られていた、と何度も何度も失敗しながらも偉大なアイデアは必ず社会を変えるのだ、と。

 

次回に続く

 

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